2022年7月19日

新規取得が困難な一廃許可 時代に合わせて柔軟な対応を行う自治体も【コラム】

はじめに

 一般廃棄物処理業の許可の新規取得は難しいと言われています。実際に環境省が公開している統計情報を見ても、近年は産業廃棄物処理業の許可件数が毎年数千件単位で増加していることが見て取れますが、一般廃棄物処理業の許可件数は数十~数百件単位の増加に留まっており、一般廃棄物処理業への新規参入が難しいということが体感的にもご理解いただけるかと思います。

業許可における近年の前年度比増加件数(当社作成)

 さて、なぜ一般廃棄物の場合はこれほどまでに新規許可の取得が難しいのでしょうか。本コラムでは、産業廃棄物とは異なる一般廃棄物処理業の許可の性質を解説した上で、時代に合わせて柔軟な対応を行う自治体の動きをご紹介します。

都道府県(政令市)の裁量権がない産廃許可

 産業廃棄物と一般廃棄物では、都道府県(政令市)と市区町村という違いはあるものの、行政が許可を行うという点は同じです。ただ、産業廃棄物処理業の許可は、要件を満たせば必ず許可をしなければならないという性質をもつものと解釈されていることから、ある意味要件を満たせば誰でも取得が可能であり、都道府県(政令市)側の裁量権は弱いと言えます。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「法」という。)第14条第5項及び第10項並びに第14条の4第5項及び第10項は、申請者が基準に適合する施設及び能力を有し、かつ、欠格要件に該当しない場合には、必ず許可をしなければならないものと解されており、法の定める要件に適合する場合においても、なお都道府県知事に対して、許可を与えるか否かについての裁量権を与えるものではないこと。

引用元環境省 産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)

市区町村の状況に依存する一廃許可

 一方、一般廃棄物処理業の許可は、市区町村側の裁量権が強いと言えます。それは、廃棄物処理法にて以下のように規定されている通り、許可の基準が個々の市区町村の状況に依存するからです。

市町村長は、第一項の許可(一廃収運)の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。
一 当該市町村による一般廃棄物の収集又は運搬が困難であること。
二 その申請の内容が一般廃棄物処理計画に適合するものであること。
三 その事業の用に供する施設及び申請者の能力がその事業を的確に、かつ、継続して行うに足りるものとして環境省令で定める基準に適合するものであること。
※赤字筆者追記

引用元廃棄物の処理及び清掃に関する法律第七条第五項

市町村長は、第六項の許可(一廃処分)の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。
一 当該市町村による一般廃棄物の処分が困難であること。
二 その申請の内容が一般廃棄物処理計画に適合するものであること。
三 その事業の用に供する施設及び申請者の能力がその事業を的確に、かつ、継続して行うに足りるものとして環境省令で定める基準に適合するものであること。
※赤字筆者追記

引用元廃棄物の処理及び清掃に関する法律第七条第十項

 この条文を読み解くと、一般廃棄物処理業の許可は、市区町村自身による一般廃棄物の収集運搬や処分が困難な状況下において、許可申請者の取組が市区町村側の計画に適合すると判断された場合に、はじめて許可されることになります。しかし、産業廃棄物とは異なり、安定的なごみ収集という住民サービスを維持することが大前提である以上、市区町村側も産業育成や都市計画、財政的な状況、地域の中長期的な発展等を踏まえて判断することになりますので、一般廃棄物処理業の許可の新規取得が難しいとされるのもある意味当然と言えるのかもしれません。

時代に合わせて柔軟な対応を行う自治体

 一方で近年では、高齢化や高齢者の独居率の増加などを背景とした新たな社会課題が顕在化しており、家財整理や遺品整理等の新たな社会的な需要が生まれ、それに応えるサービスを提供する事業者が増えてきています。そのサービスの性質上必然的に発生する廃棄物は基本的には一般廃棄物に該当するため、遺品整理サービスの一連の流れの中で廃棄物の収集運搬を行う場合は、当然一般廃棄物収集運搬業の許可を取得する必要がありますが、これまで述べてきた通り、多くの自治体では新規に許可を取得するハードルが高いのが実情です。

 そのような状況の中、帯広市や福岡市、久留米市などのように、遺品整理等に限定した一般廃棄物処理業の許可を出している自治体も出てきています。

 さまざまな社会課題が顕在化しつつある昨今、ニーズに合わせて用途を限定した一般廃棄物処理業の許可を出す動きは更に広がりをみせるのかもしれません。

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この記事の作成者

株式会社JEMS つくば本社
担当: 野口(のぐち)
URL: https://www.j-ems.jp/

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