静脈ゼミナール 委託契約書編 2022年5月18日

産業廃棄物処理委託契約書の書き方 基礎編(2/2)【静脈ゼミナール】

 産業廃棄物処理委託契約書とは、産業廃棄物の排出事業者と処理業者の間で締結される、廃棄物の運搬や処分の委託に関する契約書です。廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)により、その作成・保存義務に加え、その契約書に記載されるべき内容が細かく定義されています。

 本トピックでは、東京都が公開するひな形を参考に、基本的な書き方を全2回に分けて解説いたします。
 本コラムでは1回目に引き続き、東京都モデル契約書の記入例を引用し、基本的な記入方法についてご紹介いたします。
 東京都環境局公式サイト
 1回目はこちら:「産業廃棄物処理委託契約書の書き方 基礎編(1/2)」

委託契約書の書き方(委託期間)

委託契約書の基本的な書き方について、前回に引き続き収集運搬を委託する場合を例にとって解説致します。
東京都モデル契約書の契約当事者情報と、処理業者の事業範囲の記入欄の次に契約期間の入力欄があります。


(画像引用)東京都環境局公式サイト 産業廃棄物委託契約 モデル契約書記入例

 
 一般の契約と同様にして委託期間を記入する欄ですが、よくあるケースとして自動更新契約があります。その場合は、例えば以下の様な但し書きを追記することで、合意される場合が多いものと思います。


 「ただし、期間満了の3カ月前までに当事者のいずれからも書面による終了の意思表示がないときは、本契約と同一条件でさらに1年間継続するものとし、以後も同様とする。」


 尚、廃棄物処理法上の委託契約書の保管期間は「契約の終了後5年間」となるため、自動更新契約については終了するまで保管義務が継続される点に注意が必要です。

委託契約書の書き方(排出事業場)

 排出事業場の情報記入欄は、一般的には工場名などを記載いたします。

 実は、排出事業場の情報は法定記載事項ではないため、原理的には記載は不要です。しかし、実際の運用では記載することが多いことと思います。
 これは、収集運搬を依頼するために不可欠な情報であり、運搬費を決定するためにも重要な情報であることからです。
 また、委託業者の必要となる許可証を特定させるためにも、最低限都道府県政令市の範囲は特定する必要があります。

 

(画像引用)東京都環境局公式サイト 産業廃棄物委託契約 モデル契約書記入例

委託契約書の書き方(廃棄物種類、単価、予定数量、運搬先)

 

 委託する廃棄物種類と単価、予定数量、運搬先情報、備考情報の記入を行います。
 
 廃棄物の種類は、「廃プラスチック類」など、いわゆる法定20分類で記載することが基本となります。

 排出事業場番号は、上部で記載した排出事業場の内、どの排出事業場からその廃棄物が排出するのかを紐づける列です。該当する排出事業場の番号を記載します。

 予定数量は、おおよその予定数量を記載しますが、東京都のモデル契約書においては月間で○トンなど、単位期間あたりの記載をすることが基本とされています。
 一方で、スポットでの依頼や有期、または工事単位での契約の場合は、委託期間における総量の記載を行うケースもあります。

 業界の中では、前者の考え方を「基本契約」後者の考え方を「個別契約」などと呼ぶ場合があります。
 例えば、建設系の廃棄物においては個別契約を結ぶケースが多くあると思います。
 
 運搬先の事業場は、基本的には処分場の名称や所在地などを記載します。
 モデル契約書記入例においては、5つの廃棄物について、すべて一か所へ運搬するというシナリオで、これらを中括弧 “ }”で括る記載を例示しています。
 同様にして、単価や数量を品目別でなく複数の品目の合算で括るケースもあります。


(画像引用)東京都環境局公式サイト 産業廃棄物委託契約 モデル契約書記入例

 

 なお、東京都モデル契約書は、廃棄物データシート(WDS)を活用して、荷姿、性状などを伝達する事を原則としています。
  ※モデル契約書の第3条第2項参照
 その場合は、廃棄物の種類ごとに、該当するWDSの番号を記入する運用となります。
 一方、WDSを利用せずに荷姿、性状などを伝達する場合は、簡易的な書面を別途用意するか、または備考欄を活用して伝達する様にします。


 廃棄物種類や数量に関するよくある疑問として、「複合材などの一体不可分物の書き方をどうするのか?」といったものがあります。例えば、「プラスチックと金属で構成される机」や、「機械油が付着している金属くず」など実際には一体不可分の廃棄物は多く排出されます。

 高崎市のHPでは、そういった場合には一体不可分物の名称での記載でよいと解説されています。
 高崎市公式サイト

(画像引用)高崎市公式サイト 委託契約の記載事項の詳細について

 

 全2回にわたり、産業廃棄物の処理委託契約書の基本的な書き方をご紹介いたしました。
 実際の委託実務においては、様々な個別性もありますので、本コラムでは引き続き具体的な委託契約書の記載例を掲載してまいります。
 
 委託契約に関する疑問やコラム掲載希望などがございましたら、お気軽にお問合せフォームにてご連絡頂けると幸いです。

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この記事の作成者

株式会社JEMS
担当: 深山
URL: https://www.j-ems.jp/

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