今年4月にプラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(以下、本コラムでは「プラ法」と表現します)が施行されてからおよそ半年が経過しました。直近では、日本ケンタッキー・フライド・チキンの木製スプーンへの切り替えや仙台市が再商品化計画認定制度の第一号認定を取得するなど、幅広い領域でプラスチックの削減やリサイクルの取り組みが進んでいます。
また、プラ法では、ワンウェイプラスチックの提供事業者や自治体に対してだけではなく、プラスチック使用製品産業廃棄物等を排出する事業者に対しても排出の抑制や再資源化等への取り組みを求めています。
一般的なオフィスであっても、事業活動に伴って排出されるボールペンやクリアファイル、バインダー等はプラスチック使用製品産業廃棄物等に該当しますので、多くの事業者がこの取り組みを進めていく必要があります。
更に、多量排出事業者(前年度の排出量が250トン以上の事業者)の場合は、排出の抑制や再資源化等に関する目標設定や目標達成のための取組の計画的な実施、それらに関する情報の公表も行う必要がありますので、今後どのような取り組みを行っていくかを決定するためにも、まずは自社の排出状況の分析から着手している事業者が大多数なのではないでしょうか。
プラ法では、プラスチック使用製品、使用済プラスチック使用製品、プラスチック使用製品産業廃棄物等など、多くの用語が新出しています。それぞれの用語定義は以下の通りとなりますが、そもそもプラ法でいう「プラスチック」とは何を指しているのでしょうか?
プラ法上では「プラスチック」に関して明確な定義をしているわけではありませんが、環境省及び経済産業省が普及啓発ページで公開しているパンフレットでは、「プラスチック」を以下のように説明しています。
JIS K 6900 1994における「プラスチック」の定義
必須の構成成分として高重合体を含みかつ完成製品への加工のある段階で流れによって形を与え得る材料
ここで、JIS K 6900 1994における「プラスチック」の定義を更に詳しく見てみると、以下のような記載も見てとれます。
同様に流れによって形を与え得る弾性材料はプラスチックとしては考えない。
廃棄物処理法上は、合成ゴムは産業廃棄物(廃プラスチック類)として処理することになりますが、これらの定義から、「合成ゴムのような弾性材料はプラ法の規制対象ではないのか?廃棄物処理法とは考え方が違うのか?」という疑問を皆さんお持ちになられたかと思います。
そこで、この疑問について環境省へ照会したところ、以下のような見解を頂戴いたしました。
Q.
合成ゴムなどの弾性材料はプラ法で規制対象となるわけではなく、プラスチック使用製品産業廃棄物等にも含まれないという認識で差し支えないか?あわせて、化学繊維についても同様に対象外と考えられるか?
A.
合成ゴム、化学繊維はプラスチックの対象外としても差し支えない。
このことから、合成ゴムのような弾性材料(あわせて化学繊維も)はプラ法の対象外であり、廃棄物処理法とは考え方が異なるといえます。なお、上記見解は、「対象外とすべき」というものではなく、あくまでも法的な定義についてのものになります。排出の抑制や再資源化等の観点からも、算出対象とすることを妨げるものではありませんのでご注意ください。
プラスチックを排出する事業者は多岐にわたり、排出するプラスチック使用製品産業廃棄物の性状等も大きく異なることから、事業者の自主性に重きが置かれ、プラ法上で具体的な数値目標や取組内容等が定義されているわけではありません。
このような背景から、どのような取り組みを進めていけばいいか判断に迷うこともあるかと思われますが、具体的な取組内容を固めるためには、まずは現状を正しく分析し、理解することが重要です。算出対象をしっかりと定義し、実態に沿った取組計画を作成しましょう。