コラム 2023年2月13日

循環型社会実現に向けたサステナブル消費動向【コラム】

 本コラムでは、持続可能な循環型社会に向けた消費動向について、京都大学地球環境学堂准教授の浅利美鈴氏にご解説いただきます。


 資源循環は、持続可能な社会の構築に向けた重要な要件になっています。環境問題では、2050年の炭素中立社会の実現という大きな目標がありますが、その中でも、資源循環は大変重要な位置づけを担っています。資源の多くは、世界中の人が、様々な形で日々消費している訳ですが、いまや世界中で、大量生産・大量消費・大量廃棄するようになり、様々な形で歪が生じています。そのような中、サステナブルな消費スタイルへの転換を含む循環経済の必要性が世界中の共有課題として知られるところとなりました。筆者は、学生のころより四半世紀、ごみ研究を続けてきました。また、ライフワークとして、環境教育・啓発活動にも取り組んできました。そのような視点から、持続可能な循環型社会に向けた消費動向について考えてみたいと思います。

家庭ごみから見る消費生活の今昔

 私の所属する研究チームでは、私の恩師にあたる高月紘先生らが、1980年に京都市と始めた「家庭ごみ細組成調査」を毎年実施しています。従って、40年以上にわたるデータが蓄積されています。この調査では、家庭ごみを、プラスチックや紙、木、金属といった素材だけでなく、詳細な用途にも着目し、最終的に約400種類に分類しています。それをもとに、より具体的な3R(リデュース・リユース・リサイクル)の対策を検討・提言したり、ごみから見た暮らしの変化を考察したりしています。

京都市家庭ごみ細組成調査の様子(筆者撮影)



 例えば、約40年の経年変化を見ると、「ほぼゼロ」から増え続け、今や約2割になったものがあります。それは、「使い捨て製品」です。シングルユースやワンウェイと呼ばれることもあります。ちょうど40年前くらいから、様々なものについて、便利な使い捨てのものが開発されてきたようです。紙おむつやレジ袋などもその典型です。加えて、このコロナ禍で、消毒のためのウェットティッシュ類、マスク類や手袋なども増えました。また、おむつについては、子供用が減っているものの、大人用が増えており、今後の高齢化の進展を考えると、今後も増加することが予想されます。後述するプラスチック対策にて、使い捨てプラスチック製品の使用削減が進められていますが、他方で、増えるものもあるのです。

 このように得られた知見も活かしつつ、京都市では、ごみ削減に取り組んできました。ピーク時(2020年)より半減するという目標を立てていましたが、見事達成し、さらなる高みを目指しています。

 それでも、まだまだ、もったいないごみもあります。その代表例が「食品ロス」です。家庭ごみの中で、重量で一番重いのは、食品類(生ごみ)で、約4割ありますが、そのうち、食べられるのに捨てられた「食品ロス」は3~4割程度あります。その中でも目につくのが、開封もされていないような「手つかず食品」です。期限を超えたものや、見るからに傷んだものもありますが、中には「どうして捨てられたのだろう?」と疑問を抱くものもあります。このように、私たちの消費生活には、まだまだ「もったいない」側面があるようです。

145世帯の3日分の家庭ごみから出てきた「手つかず食品」(筆者撮影)

資源循環を考える好素材「プラスチック」

 プラスチックは、資源循環を考える格好の素材と言えるでしょう。先述の通り、様々な使い捨て製品の開発や拡大に寄与してきた他、容器包装類の多くがプラスチックになりました。また、家電から家具、日用品、繊維類に至るまで、今や、ありとあらゆる製品がプラスチックで構成されているといっても過言ではありません。そのような中、特に途上国では、環境流出による汚染が深刻となり、世界の共有課題として認識されるに至り、数年前から、国内外で本格的な対策がとられ始めています。

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