GX推進法案とは、正式名称を「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案」といい、世界規模でのグリーン・トランスフォーメーション(GX)実現に向けた、日本国内における2050年カーボンニュートラル等の国際公約と、産業競争力強化・経済成長を両立させるのための、官民によるGX投資を促進させることを目的とした法案です。2023年2月10日に閣議決定され、今国会(第211回通常国会)での成立が目指されています。
本コラムでは、GX推進法案の概要をご紹介します。
世界規模でグリーン・トランスフォーメーション(GX)実現に向けた投資競争が加速する中で、日本国内でも2050年カーボンニュートラル等の国際公約と産業競争力強化・経済成長を同時に実現していくためには、今後10年間で150兆円を超える官民のGX投資が必要となります。
GX推進法案はその実現に向けて、昨年12月にGX実行会議で取りまとめられた「GX実現に向けた基本方針」に基づいて、(1)GX推進戦略の策定・実行、(2)GX経済移行債の発行、(3)成長志向型カーボンプライシングの導入、(4)GX推進機構の設立、(5)進捗評価と必要な見直しを法定したものです。
この法案は、正式名称を「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案」といい、全79条からなる条文で構成されています。第一章の総則から始まり、第二章から順に、脱炭素成長型経済構造移行推進戦略、脱炭素成長型経済構造移行債、化石燃料賦課金及び特定事業者負担金、脱炭素成長型経済構造移行推進機構についてそれぞれ定めたうえで、雑則、罰則を設けています。
(1)GX推進戦略の策定・実行
政府は、GXを総合的かつ計画的に推進するための戦略(脱炭素成長型経済構造移行推進戦略)を策定する必要があります。戦略の案は、経済産業大臣が財務大臣、環境大臣等と協議のうえ作成し、閣議決定をもって策定されます。【第6条】
(2)GX経済移行債の発行
政府は、GX推進戦略の実現に向けた先行投資を支援するため、2023年度(令和5年度)から10年間で、GX経済移行債(脱炭素成長型経済構造移行債)を発行することができるようになります。発行される移行債は、今後10年間で20兆円規模となる見込みです。【第7条】
また、GX経済移行債は、化石燃料賦課金・特定事業者負担金の収入により、2050年度(令和32年度)までに償還されます。【第8条】
(3)成長志向型カーボンプライシングの導入
① 炭素に対する賦課金(化石燃料賦課金)の導入
• 2028年度(令和10年度)から、経済産業大臣は、化石燃料の輸入事業者等に対して、輸入等する化石燃料に由来するCO2の量に応じて、化石燃料賦課金を徴収します。【第11条】
② 排出量取引制度
• 2033年度(令和15年度)から、経済産業大臣は、CO2の排出量が多い特定の発電事業者に対して、一部有償でCO2の排出枠(量)を割り当て、その量に応じた特定事業者負担金を徴収します。【第15条・第16条】
• 具体的な有償の排出枠の割当てや単価は、入札方式(有償オークション)により、決定します【第17条】
(4)GX推進機構の設立
経済産業大臣の認可により、GX推進機構(脱炭素成長型経済構造移行推進機構)が設立されます。GX推進機構の業務は、下記の業務を行います。【第54条】
① 民間企業のGX投資の支援(債務保証等の金融支援)
② 化石燃料賦課金・特定事業者負担金の徴収
③ 排出量取引制度の運営(特定事業者排出枠の割当て・入札等) 等
(5)進捗評価と必要な見直し
GX投資等の実施状況や、CO2の排出に係る国内外の経済動向等を踏まえ、施策の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な見直しを講じます。
また、化石燃料賦課金や排出量取引制度に関する詳細の制度設計について、排出枠取引制度の本格的な稼働のための具体的な方策を含めて検討し、この法律の施行後2年以内に、必要な法制上の措置を行います。【附則第11条】
2023年3月30日現在、GX推進法案は衆議院本会議で、自民・公明両党と日本維新の会、国民民主党の賛成多数で可決されています。今後は、参議院にて審議が行われ、今国会(第211回通常国会)での成立が目指されています。
以上、GX推進法案の概要をご紹介しました。
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