コラム 2023年6月21日

環境白書が公開されました【コラム】

 2023年6月9日、環境省より、令和5年版の環境白書、循環型社会白書および生物多様性白書が公表されました。環境白書は、環境基本法に基づいて、毎年、環境の状況や環境の保全に関して、これまで講じてきた施策やこれから講じようとしている施策を取りまとめたものです。例年、環境の日(6月5日)に合わせて、6月上旬ごろに閣議決定されます。循環型社会白書、生物多様性白書と合わせて、1冊に合冊されています。

 詳細は、以下のホームページをご確認ください。
 環境省HP 令和5年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書の公表について

白書のテーマ

 令和5年版の環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書のテーマは、「ネットゼロ、循環経済、ネイチャーポジティブ経済の統合的な実現に向けて~環境・経済・社会の統合的向上~」です。

 気候変動や生物多様性の損失等の地球環境の悪化は、危機的状況にあり、環境問題の枠にとどまらず、経済・社会にも大きな影響を与える問題として認識されています。

 直面する数々の社会課題に対し、炭素中立(ネットゼロ)・循環経済・自然再興(ネイチャーポジティブ)の同時達成に向け、地域循環共生圏の構築等により統合的に取組を推進することを通じて、持続可能な新たな成長を実現し、将来にわたる質の高い生活の確保を目指します。

白書の構成

 本白書は、2部で構成されています。第1部では、総合的な施策等に関する報告があり、4つの章から成っています。

 第1章 気候変動と生物多様性の現状と国際的な動向
  気候変動や生物多様性の損失等の地球環境の悪化は、環境問題の枠にとどまらず、経済・社会にも大きな影響を与える問題として認識され、引き続き、世界は危機に直面している。

 第2章 持続可能な経済社会システムの実現に向けた取組
  経済社会システムの変革は、炭素中立だけでなく、循環経済・自然再興の面からの取組も相互に連関していく。3つの同時達成に向けて相乗効果が出るよう、統合的に取組を推進する。

 第3章 持続可能な地域と暮らしの実現
  炭素中立、循環経済、自然再興の同時達成は、地域やそこに住んでいる人々の暮らしを、環境をきっかけとして豊かさやwell-beingにもつなげていくことが重要。「地域循環共生圏」を更に発展させるとともに、全国規模に広げていく。

 第4章 東日本大震災・原発事故からの復興・再生に向けた取組
  被災地の環境再生の取組の進捗や、復興の新たなステージに向けた未来志向の取組を伝える。


 第2部では、各分野の施策等に関する報告があります。令和4年度に各分野で講じた施策と、令和5年度に各分野で講じようとする施策について記載されており、それぞれ6つの章から成っています。

 令和4年度に各分野で講じた施策
 第1章 地球環境の保全
  地球温暖化対策/気候変動の影響への適応の推進/オゾン層保護対策等

 第2章 生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する取組
  生物多様性条約COP15及び生物多様性国家戦略/生物多様性の主流化に向けた取組の強化/生物多様性保全と持続可能な利用の観点から見た国土の保全管理/海洋における生物多様性の保全/野生生物の適切な保護管理と外来種対策の強化/動物の愛護及び適正な管理/持続可能な利用/国際的取組/生物多様性及び生態系サービスの把握

 第3章 循環型社会の形成
  廃棄物等の発生、循環的な利用及び処分の現状/持続可能な社会づくりとの統合的取組/多種多様な地域循環共生圏形成による地域活性化/ライフサイクル全体での徹底的な資源循環/適正処理の更なる推進と環境再生/適正な国際資源循環体制の構築と循環産業の海外展開の推進/循環分野における基盤整備

 第4章 水環境、土壌環境、地盤環境、海洋環境、大気環境の保全に関する取組
  健全な水循環の維持・回復/水環境の保全/アジアにおける水環境保全の推進/土壌環境の保全/地盤環境の保全/海洋環境の保全/大気環境の保全

 第5章 包括的な化学物質対策に関する取組
  化学物質のリスク評価の推進及びライフサイクル全体のリスクの削減/化学物質に関する未解明の問題への対応/化学物質に関するリスクコミュニケーションの推進/化学物質に関する国際協力・国際協調の推進/国内における毒ガス弾等に係る対策

 第6章 各種施策の基盤となる施策及び国際的取組に係る施策
  政府の総合的な取組/グリーンな経済システムの構築/技術開発、調査研究、監視・観測等の充実等/国際的取組に係る施策/地域づくり・人づくりの推進/環境情報の整備と提供・広報の充実/環境影響評価/環境保健対策/公害紛争処理等及び環境犯罪対策


 令和5年度に各分野で講じようとする施策
 第1章 地球環境の保全
  地球温暖化対策/気候変動の影響への適応の推進/オゾン層保護対策等

 第2章 生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する取組
  昆明・モントリオール生物多様性枠組及び生物多様性国家戦略2023-2030の実施/生物多様性の主流化に向けた取組の強化/生物多様性保全と持続可能な利用の観点から見た国土の保全管理/海洋における生物多様性の保全/野生生物の適切な保護管理と外来種対策の強化/動物の愛護及び適正な管理/持続可能な利用/国際的取組/生物多様性の保全及び持続可能な利用に向けた基盤整備

 第3章 循環型社会の形成
  持続可能な社会づくりとの統合的取組/多種多様な地域循環共生圏形成による地域活性化/ライフサイクル全体での徹底的な資源循環/適正処理の更なる推進と環境再生/東日本大震災からの環境再生/万全な災害廃棄物処理体制の構築/適正な国際資源循環体制の構築と循環産業の海外展開の推進/循環分野における基盤整備

 第4章 水環境、土壌環境、地盤環境、海洋環境、大気環境の保全に関する取組
  健全な水循環の維持・回復/水環境の保全/アジアにおける水環境保全の推進/土壌環境の保全/地盤環境の保全/海洋環境の保全/大気環境の保全

 第5章 包括的な化学物質対策に関する取組
  化学物質のリスク評価の推進及びライフサイクル全体のリスクの削減/化学物質に関する未解明の問題への対応/化学物質に関するリスクコミュニケーションの推進/化学物質に関する国際協力・国際協調の推進/国内における毒ガス弾等に係る対策

 第6章 各種施策の基盤となる施策及び国際的取組に係る施策
  政府の総合的な取組/グリーンな経済システムの構築/技術開発、調査研究、監視・観測等の充実等/国際的取組に係る施策/地域づくり・人づくりの推進/環境情報の整備と提供・広報の充実/環境影響評価/環境保健対策/公害紛争処理等及び環境犯罪対策

白書のポイント

テーマ
 ネットゼロ、循環経済、ネイチャーポジティブ経済の統合的な実現に向けて ~環境・経済・社会の統合的向上~

趣旨
 ・地球環境の悪化は危機的状況にあり、経済・社会にも大きな影響を与える問題
 ・ 炭素中立・循環経済・自然再興の同時達成に向け、統合的に取組を推進することで、 新たな成長と将来にわたる質の高い生活の確保を目指し、豊かな暮らしやwell-beingにつなげていく。

危機的状況の認識の共有
<気候変動>
 -世界は未だパリ協定の目標達成には及ばず、1.5℃に向けた信頼性の高い経路に乗れていない。
 -この10年間に行う選択や実施する対策は、現在から数千年先まで影響を持ち、今すぐ対策を取ることが必要。
<生物多様性>
 過去50年間の地球上の種の絶滅は、過去1,000万年平均の少なくとも数十倍、あるいは数百倍の速度で進行。
<相互関連>
 ・ 気候変動と生物多様性は相互に関連している。
 ・ プラネタリー・バウンダリー(地球の限界、生態学的上限)を超えず、ソーシャル・バウンダリー(社会の境界、社会的基礎)の下に落ちない領域「ドーナツ内での生活」を目指すべき。

世界の動き
 ・ COP27(気候変動)
  「シャルム・エル・シェイク実施計画」
  緩和、適応、ロス&ダメージ、気候資金等の分野で対策強化。実施のCOP。
 ・ COP15(生物多様性)
  「昆明・モントリオール生物多様性枠組」
  30by30目標等の2030年までのグローバルターゲットの設定。
 ・ G7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合
  ネットゼロ、循環経済、ネイチャーポジティブ経済の統合的な実現の重要性を共有。
  ※G7広島サミットのコミュニケでも同様の認識を共有

国内の取組
 2030年までの期間を「勝負の10年」と位置づけ、各分野での取組を統合的に推進
  ・ 炭素中立(CN):GXの実現、地域の脱炭素化等
  ・ 循環経済(CE):3R+Renewableの推進等
  ・ 自然再興(NP):30by30目標、OECM等
  ・ ライフスタイルシフト、熱中症対策、化学物質・公害対策等
  ・ 東日本大震災・原発事故からの復興・再生


 以上、環境省より公表された、令和5年版の環境白書、循環型社会白書および生物多様性白書の概要をご紹介いたしました。
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この記事の作成者

株式会社JEMS つくば本社
担当: 鮏川(すけがわ)
URL: https://www.j-ems.jp/

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