業界ニュース 2022年6月22日

現地確認のリモート許容か アナログ規制改革が廃棄物処理法にもたらす影響とは【業界ニュース】

はじめに

 2022年6月3日に岸田文雄首相出席の下、デジタル庁のデジタル臨時行政調査会(第4回)が開催され、国の法令と政省令において「目視・対面・人の常駐」などを義務付けた、いわゆる「アナログ規制」の撤廃計画が決められました。
 デジタル庁の調査会事務局は、代表的なアナログ規制である「目視、定期検査・点検、実地監査、常駐・専任、書面掲示、対面講習、往訪閲覧・縦覧」の7項目に該当する条項の洗い出しを行い、それぞれの項目ごとに「Phaseと類型(後述)」という考え方に基づき見直しを図りました。
 洗い出された約5,000条項のうち、約4,000条項については既に見直し後の方針が確定しており、廃棄物処理法に関しても、①目視規制、②常駐専任、③定期検査、④往訪閲覧に関する61の条項について、その考え方に基づき規制改革が行われる予定です。
 このアナログ規制改革の背景や今後のスケジュールの見通し等については、当社公式HPのコラムでも紹介させていただいておりますので、是非合わせてご覧ください。

廃棄物処理法へもたらす影響

 廃棄物処理法に関して見直される61条項の項目別分類は以下の通りとなり、①目視規制、②常駐専任、③定期検査、④往訪閲覧の4項目に関する規制が見直されます。

①目視規制 ②常駐専任 ③定期検査 ④往訪閲覧
4 3 41 13 61

①目視規制

 1つ目の大きな注目ポイントは、廃掃法第十二条第七項で規定される「処理状況確認(現地確認)」についての見直しです。従来は現地での確認が一般的でしたが、本方針通りの改革が進む場合、Phase1-②からPhase2へと見直され、オンライン会議システム等を活用したリモートでの情報収集手段に移行される見込みです。

(出典:デジタル庁 デジタル臨時行政調査会 デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン(案))

 昨今のコロナ禍においては、オンライン会議システムを活用したリモート現地確認を許容する自治体も一部ありますが、可能な限り現地へ赴いて確認することが望ましいとされることが実情です。
 今回のアナログ規制改革の動きを受け、リモートでの処理状況確認が一般的に認められるようになれば、排出事業者にとっては、移動が削減されることによる時間とお金の削減や、会議体に複数人が参加することによる属人化の予防に繋がる一方、対応する処理業者にとっては、個別に対応していた現地確認を集合研修のようにまとめて対応できるようになるなど、より柔軟なかたちでの運用が可能になることが期待されます。

②常駐専任

 2つ目の大きな注目ポイントは、廃掃法第十二条の二第八項で規定された「特別管理産業廃棄物管理責任者の設置」の見直しです。従来、特別管理産業廃棄物を生ずる事業場を設置している事業者は、当該事業場ごとに、資格等の要件を満たした特別管理産業廃棄物管理責任者を設置する必要がありましたが、この規制がPhase1-1からPhase3-1へと見直され、遠隔監視装置や監視カメラ等のデジタル技術を活用することによって当該規制が撤廃される見込みです。

(出典:デジタル庁 デジタル臨時行政調査会 デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン(案))

 組織再編や人事異動などの影響を受けにくくなるだけではなく、コンビニで処方薬の受け取りも可能になってきている昨今、例外的に特別管理産業廃棄物が発生する可能性のある店舗を抱える事業者にとっても有利に働くかもしれません。
 なお、アナログ規制改革とは話がそれますが、平成12年に閣議決定された「規制緩和推進3か年計画(再改定)」にて特別管理産業廃棄物管理責任者の要件が緩和され、事業者との責任関係を明確にした上であれば、事業者と直接的な雇用関係にない者を特別管理産業廃棄物管理責任者として選任することが可能になりました。
 ただ、外部委託の要件となる「事業者との責任関係の明確さ」の判断基準は自治体依存ということで、全国の事業場ですべからく外部委託が可能とは断言することができないのが実情です。

特別管理産業廃棄物管理責任者は、資格者を置くべき事業場の事業者と直接的な雇用関係にある者から選任することとする運用がなされているが、設置者との責任関係を明確にした上で、設置者と直接的な雇用関係にないが正当な資格を有する者からも選任することが可能となるよう検討を行い、その結果に基づき所要の措置を講ずるべきであるとの指摘を踏まえ、廃棄物処理法上、外部委託を禁ずるものではない旨を周知済み。

引用元環境省における必置資格の見直しの検討状況について

③定期検査

 他に、廃棄物処理施設の定期検査に関する多くの規制も見直されます。既に見直し後の方針が確定している61条項の内、41条項がこの規制に関するものであり、具体的には、一般廃棄物処理施設や産業廃棄物処理施設における構造基準や維持管理基準等に関する定期検査規制がPhase2若しくはPhase3へと見直され、検査周期の延長などが行われる見込みです。

(出典:デジタル庁 デジタル臨時行政調査会 デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン(案))

④往訪閲覧

 最後に、役所等へ訪問しての縦覧や閲覧がPhase3-3若しくはPhase3-4へと見直されます。具体的には、一般廃棄物処理施設や産業廃棄物処理施設の設置許可申請書他関連書類の公衆縦覧等に関して、掲示から公開、縦覧等までの一連の流れがデジタル上で完結するようになる見込みです。

(出典:デジタル庁 デジタル臨時行政調査会 デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン(案))

最後に

 アナログ規制改革が廃棄物処理法にもたらす影響について、いかがだったでしょうか。より具体的な時期や内容などは今後決定されていきますが、2023年から2025年6月までの2年半の間で必要な法改正などが実施される計画となっており、政府から公的にリモートや自動で行うことが認められれば、企業としてより柔軟な運用を行うことが可能となります。今後の改革の動きや推進のスケジュールに注目し、法令遵守と運用効率の両立を目指しましょう。

 もし、本コラムがお役に立ちましたら 「この記事は役に立ちましたか?」で「はい」ボタンをクリック頂けると励みになりますので、よろしければクリックをお願い致します。併せて、コラムへの掲載希望やご質問などがございましたら、本サイトのお問合せフォームにて、ご意見・ご質問をお待ちしております。

この記事の作成者

株式会社JEMS つくば本社
担当: 野口(のぐち)
URL: https://www.j-ems.jp/

一緒に読まれている記事

この記事は役に立ちましたか?

TOP

検索
資源循環ノート