静脈ゼミナール マニフェスト編 2022年6月15日

産業廃棄物管理票(マニフェスト)について【静脈ゼミナール】

 産業廃棄物管理票(マニフェスト)とは、排出事業者が交付する必要のある、7枚つづり(積替え保管を経由する場合は8枚つづり)の複写式の伝票のことです。マニフェスト交付制度は、排出事業者責任のもと、委託した産業廃棄物がどのような流れをたどって処理されているのかを把握したり、委託契約の内容に基づいて適正に処理されていることを確認したりすることを目的として作られた仕組みです。

 今回のトピックでは、マニフェストの交付または登録義務や法定記載事項といった基本的な事項についてご説明します。

排出事業者はマニフェストの交付や登録が必要

 排出事業者は産業廃棄物の処理を委託する際に、マニフェストを交付する必要があります。このことは、廃棄物処理法第十二条の三第一項に規定されています。

 マニフェストには、紙マニフェストと電子マニフェストの2種類あります。産業廃棄物の種類や委託先の処理業者の名称といった記載するべき事項(法定記載事項)が決まっており、これらの事項を正しく記載・管理することが排出事業者・処理業者に求められています。マニフェストの法定記載事項については、本トピックの次の章以降でご紹介します。

 紙マニフェストは、廃棄物処理法上では「産業廃棄物管理票」と表現されています。一般的には7枚つづりからなる複写式伝票の形式で運用され、産業廃棄物を引き渡すタイミングで、排出事業者用の控えを除いた分を処理業者に交付します。排出事業者は、処理業者から返送されたマニフェストの内容から、委託した産業廃棄物の処理が終了していることを確認します。

第十二条の三 その事業活動に伴い産業廃棄物を生ずる事業者(略)は、その産業廃棄物(略)の運搬又は処分を他人に委託する場合(略)には、環境省令で定めるところにより、当該委託に係る産業廃棄物の引渡しと同時に当該産業廃棄物の運搬を受託した者(略)に対し、(略)産業廃棄物管理票(略)を交付しなければならない。

引用元廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第十二条の三第一項(2022年6月現在)

 紙マニフェストを用いる場合には、交付したマニフェストや返送を受けたマニフェストの写しを5年間保存したり、年に一度、管理票に関する報告書を行政機関へ提出したりするといった義務もあります。


  電子マニフェストについては廃棄物処理法第十二条の五第一項と第二項に規定されています。電子マニフェストは、PCB廃棄物を除いた特別管理産業廃棄物を多量に排出する事業場を設置している事業者(電子マニフェスト使用義務者)に対して、その使用が義務付けられています。一方で、電子マニフェスト使用義務者に該当しない排出事業者は、紙マニフェストまたは電子マニフェストのいずれかを選択することができます。

 電子マニフェスト使用義務者であるかどうかにかかわらず、電子マニフェストを使用する場合は、紙マニフェストの交付が不要になります。また、紙マニフェストを運用する場合に義務付けられているマニフェストの保存や行政への交付等状況の報告も不要になります。

第十二条の五 第十二条の三第一項に規定する事業者であつて、その事業活動に伴い多量の産業廃棄物(略)を生ずる事業場を設置している事業者として環境省令で定めるもの(略)は、その産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合(略)には、(略)電子情報処理組織を使用して、当該委託に係る産業廃棄物の種類及び数量、運搬又は処分を受託した者の氏名又は名称その他環境省令で定める事項を情報処理センターに登録しなければならない。この場合において、当該電子情報処理組織使用義務者は、運搬受託者及び処分受託者から報告することを求め、かつ、情報処理センターに登録したときは、第十二条の三第一項の規定にかかわらず、当該運搬受託者又は処分受託者に対し管理票を交付することを要しない。

2 第十二条の三第一項に規定する事業者(略)は、その産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合(略)において、(略)電子情報処理組織を使用して、当該委託に係る産業廃棄物の種類及び数量、運搬又は処分を受託した者の氏名又は名称その他環境省令で定める事項を情報処理センターに登録したときは、同項の規定にかかわらず、当該運搬受託者又は処分受託者に対し管理票を交付することを要しない。

引用元廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第十二条の五第一項・第二項(2022年6月現在)

紙マニフェストの法定記載事項

 紙マニフェストの法定記載事項は、廃棄物処理法第十二条の三第一項と、同法施行規則第八条の二十一の中で定められています。

第十二条の三 その事業活動に伴い産業廃棄物を生ずる事業者(略)は、(略)当該委託に係る産業廃棄物の種類及び数量、運搬又は処分を受託した者の氏名又は名称その他環境省令で定める事項を記載した産業廃棄物管理票(略)を交付しなければならない。

引用元廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第十二条の三第一項(2022年6月現在)
引用元廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則 第八条の二十一(2022年6月現在)

 本トピックでは、一次マニフェスト(排出事業者から中間処理業者までのマニフェスト)、かつ積替え保管を経由しない直行経路における処理の流れを想定して紙マニフェストの法定記載事項を具体的に見ていきます。なお積替え保管の考え方については、下記の記事をご参照ください。

 産業廃棄物の積替え保管とは

 このケースにおいては、以下の表組に列挙した項目が必要な記載事項になります。

紙マニフェストの法定記載事項
1. 管理票の交付年月日
2. 管理票の交付番号
3. 管理票の交付を担当した者の氏名
4. 氏名又は名称及び住所
5. 産業廃棄物を排出した事業場の名称及び所在地
6. 産業廃棄物の種類
7. 産業廃棄物の数量
8. 産業廃棄物の荷姿
9. 当該産業廃棄物に係る最終処分を行う場所の所在地
10. 運搬を受託した者の氏名又は名称及び住所
11. 運搬先の事業場の名称及び所在地
12. 処分を受託した者の氏名又は名称及び住所

 紙マニフェストは廃棄物処理法上でその様式が定められており、この様式に従って記載することで、法定記載事項を網羅することができます。上記表組にて列挙した法定記載事項は、下図の紙マニフェストのフォーマット上の1から12の数字が振られた項目に該当します。

 廃棄物処理法上の様式に沿った紙マニフェストは(公社)全国産業資源循環連合会などにより発行されています。

(公社)全国産業資源循環連合会から発行されているフォーマットをもとに作者作成

 二次マニフェスト(中間処理業者から最終処分業者までのマニフェスト)の場合や積替え保管を経由する処理経路の場合は、上記以外に記載が必要な項目がありますので、ご留意いただければと存じます。

電子マニフェストの法定記載事項

 電子マニフェストの法定記載事項は、廃棄物処理法第十二条の五第一項(第二項)と、同法施行規則第八条の三十二で定められています。ほとんどの記載事項は紙マニフェストのものと同様になりますが、電子マニフェストには「登録日」とは別に「産業廃棄物の引渡し日」の項目があるなど、微妙に異なる点もあります。

 電子マニフェストは、(公財)日本産業廃棄物処理振興センターが提供している電子マニフェストシステム「JWNET」を通じて登録することができます。法定記載事項はJWNET上で必須登録項目となっていますので、JWNETを通じて登録することで、漏れなく登録することが可能となっています。

第十二条の五 第十二条の三第一項に規定する事業者であつて、その事業活動に伴い多量の産業廃棄物(略)を生ずる事業場を設置している事業者として環境省令で定めるもの(略)は、(略)当該委託に係る産業廃棄物の種類及び数量、運搬又は処分を受託した者の氏名又は名称その他環境省令で定める事項を情報処理センターに登録しなければならない。(略)

引用元廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第十二条の五第一項(2022年6月現在)
引用元廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則 第八条の三十二(2022年6月現在)

 こちらも、一次マニフェスト(排出事業者から中間処理業者までのマニフェスト)、かつ積替え保管を経由しない直行経路における処理の流れを想定して法定記載事項を見ていきたいと思います。以下の表組に列挙した項目が必要な記載事項になります。

電子マニフェストの法定記載事項
1. 産業廃棄物の引渡し年月日
2. 登録年月日
3. 登録番号
4. 産業廃棄物の引渡しを担当した者の氏名
5. 氏名又は名称及び住所
6. 産業廃棄物を排出した事業場の名称及び所在地
7. 産業廃棄物の種類
8. 産業廃棄物の数量
9. 産業廃棄物の荷姿
10. 当該産業廃棄物に係る最終処分を行う場所の所在地
11. 運搬を受託した者の氏名又は名称及び住所
12. 運搬先の事業場の名称及び所在地
13. 処分を受託した者の氏名又は名称及び住所

 電子マニフェストの場合も、紙マニフェストの場合と同様に、二次マニフェスト(中間処理業者から最終処分業者までのマニフェスト)の場合や積替え保管を経由する処理経路の場合は、上記以外に記載が必要な項目があります。

 以上、産業廃棄物管理票(マニフェスト)の基本についてご紹介しました。マニフェスト交付の流れについては、別のトピックにてご説明していきたいと思います。

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この記事の作成者

株式会社JEMS つくば本社
担当: 鮏川(すけがわ)
URL: https://www.j-ems.jp/

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