域外産業廃棄物の事前協議制度とは、区域外からの産業廃棄物の搬入に規制を設けることで、産業廃棄物の適正処理を推進し、周辺地域における生活環境の保全等を図ることを目的として、都道府県や政令市がその条例等において定めている制度のことです。この制度において、当該都道府県や政令市の管轄区域外で排出された産業廃棄物をその区域内で処分しようとする事業者は、事前協議書を提出し知事や市長からの承認を受けることが求められています。
自治体によっては、域外産業廃棄物の搬入を規制する方法として、事前協議ではなく、事前届出の提出を求めたり、そもそも搬入自体を禁止したりするところもあります。
今回のトピックでは、事前協議制度をはじめとした、域外産業廃棄物の搬入規制の概要についてご説明します。
また、本ウェブサイトの「自治体データバンク」では、自治体ごとにおける域外産業廃棄物の搬入規制状況についてまとめています。ぜひご覧ください。
自治体データバンク
都道府県や政令市によっては、その条例や要綱等で区域外からの産業廃棄物の搬入に対して規制を設けています。この制度は、「産業廃棄物域内搬入事前協議制度」と表現されるほか、単に「県外搬入規制」や「事前協議制度」と呼ばれることもあります。域外産業廃棄物の事前協議制度を設けている自治体へ産業廃棄物を搬入する排出事業者は、当該都道府県や政令市の長に、事前に書類を提出し、承認を受けなければならないとされています。
たとえば茨城県の場合、「茨城県県外から搬入する産業廃棄物の処理に係る事前協議実施要項」の中で、域外からの排出事業者に対して、下記のとおり規制を設けています。
(搬入事前協議書の提出)
第3条 茨城県の区域外に存する事業場から排出する産業廃棄物を茨城県の区域内(以下「県内」という。)で処分しようとする事業者(以下「県外排出事業者」という。)は,あらかじめ,知事に産業廃棄物県内搬入処分事前協議書(様式第1号。以下「搬入事前協議書」という。)を提出し,その承認を受けなければならない。(略)
また、政令市において事前協議制度が設けられている場合、政令市長の承認を受ける前に、あらかじめ当該政令市を管轄する都道府県との協議を必要とするケースもあります。
たとえば旭川市の指導要綱では、「北海道が定める条例に基づき、道外で発生した産業廃棄物の搬入について、あらかじめ北海道と協議を行い、確認を受ける」旨が規定されています。
(道外で発生した廃棄物の処理等)
第27条 道外で発生した廃棄物(以下「道外廃棄物」という。)を単に埋立処分又は焼却処分するために市内に搬入することは、原則として認めないものとする。ただし、道外廃棄物を再生利用又は焼却処理以外の中間処理のために搬入しようとする場合で、次の各号に掲げる事項に該当するとともに、排出事業者が事前に市と協議を行い、市長の承認を受けた場合は、この限りでない。
(1) (略)
(2) 北海道が定める「北海道循環型社会形成の推進に関する条例」に基づき、道外で発生した産業廃棄物の搬入について、あらかじめ北海道と協議を行い、確認を受けたものであること。
一度承認された事前協議の内容を変更する場合は、その変更内容に応じて、再度の事前協議や変更届出の提出が求められます。
茨城県の場合、排出事業場や産業廃棄物の種類といった、周辺地域における生活環境の保全等への影響が大きい内容を変更する際には、搬入事前協議の内容変更に伴う再協議が必要です。一方で、排出事業者の氏名や名称、住所の変更などの軽微な変更の際には、変更届出書の提出をもって内容を変更することができます。
(略)承認を受けた協議の内容を変更しようとする場合(第8条に定める場合に限る。)又は協議を更新する場合も同様とする。
なお事前協議書の様式や記載例は、各自治体の公式HPから確認することができます。
参考:茨城県HP
2021年8月時点において弊社が調査したところでは、全国129の自治体のうち、半数を超える自治体が事前協議をはじめとした域外産業廃棄物の搬入規制を設けています。
自治体によっては、前述の事前協議制度ではなく、事前届出の提出を求めたりすることもあれば、そもそも搬入自体を禁止したりしているところもあります。
たとえば、北九州市では、市外から市内へ産業廃棄物を年間1,000トン(特別管理産業廃棄物は100トン)以上搬入する事業者は、事前に北九州市長への届出が必要であると規定しています。
(市外事業者の届出等)
第8条 市外事業者は、別表第3第1号又は第2号に規定する数量の産業廃棄物を自ら又は他人に委託して市内に搬入しようとするときは、あらかじめ次に掲げる事項を市長に届け出なければならない。(略)
また、宮崎県では原則として県外産業廃棄物の搬入を禁じており、県知事が認めた場合に限り、特例として搬入することができます。ただしこの場合でも、県知事との事前協議を必要としています。
(県外産業廃棄物の搬入の原則禁止等)
第5条 県外排出事業者は、宮崎県内において処分し、又は保管するために県外産業廃棄物を搬入してはならない。
2 前項の規定にかかわらず、県外排出事業者は、知事が認めたときに限り、特例として、宮崎県内において処分し、又は保管するために県外産業廃棄物を搬入することができるものとする。
本ウェブサイトの「自治体データバンク」では、自治体ごとにおける域外産業廃棄物の搬入規制状況についてまとめていますので、ご参考にしていただけましたら幸いです。
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さらに条例や指導要綱によっては、処理委託の形態や委託先処理業者の認定状況等に応じて協議相手や協議の要否が変わることもあります。
たとえば、茨城県の条例では、電子マニフェストを利用している排出事業者が産業廃棄物の処理を他者に委託する場合、事前協議の相手は県知事ではなく、委託先の処分業者となります。
(法第12条の5による電子情報処理組織を使用した場合の搬入事前協議)
第11条 県外排出事業者が,法第12条の5による電子情報処理組織を使用して,当該排出事業者から発生する産業廃棄物の処分を県内産業廃棄物処分業者に委託する場合は,第3条第1項の規定にかかわらず,事前に当該産業廃棄物処分業者とその処理について協議をし,その承諾を得ることをもって代えることができる。
また、静岡県の条例では、廃棄物処理法施行令(第6条の11第2号または第6条の14第2号)で規定される優良産廃処理業者に委託する場合や、同施行令(第8条の19)におけるマニフェストの交付を要しない場合は、事前協議が不要となります。
※事前協議が不要となる場合については、静岡県以外にも、上述の茨城県をはじめとする複数の自治体で規定されています。
(事前協議の期限等)
第6条
(略)
3 第1項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、条例第12条第1項の規定による協議を行うことを要しない。
(1) 政令第6条の11第2号又は第6条の14第2号に掲げる者に県外産業廃棄物の処分を委託する場合
(2) 省令第8条の19各号に掲げる場合
以上、事前協議制度をはじめとした、域外産業廃棄物の搬入規制の概要についてご紹介しました。
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