多量排出事業者とは、前年度の産業廃棄物の発生量が1,000t以上(特別管理産業廃棄物の場合は50t)である事業所を設置している事業者のことを指し、廃棄物処理法上さまざまな義務が規定されています。
今回のトピックでは、多量排出事業者の概要と判断基準、プラスチック資源循環促進法でも定められている多量排出事業者との違いについて解説します。
廃棄物処理法で定められている多量排出事業者とは、以下のいずれかの要件を満たしている事業者を指します。
・前年度の産業廃棄物の発生量が1,000t以上である事業場を設置している事業者(法施行令第六条の三)
・前年度の特別管理産業廃棄物の発生量が50t以上である事業場を設置している事業者(法施行令第六条の七)
そして、上記の要件に該当する場合は、廃棄物の減量や適正処理を推進するための「①処理計画書」及びその実施状況について取りまとめた「②実施状況報告書」を作成し、毎年6月30日までに都道府県や政令市に提出する必要があります。
なお、埼玉県などといった一部自治体では、横出し的に規制の及ぶ範囲を強めている場合もあります。多くの自治体がHP上で多量排出事業者についての案内や様式について公開していますので、念のため管轄の自治体がどのようなルールを敷いているのか確認してみましょう。
多量排出事業者においては、発生量などといった判断基準を正確にとらえることが重要になります。環境省が策定したマニュアルをまとめましたので、当該マニュアルと合わせてご一読ください。
■発生量
多量排出事業者が設置する事業場において、その事業活動に伴って発生する産業廃棄物の量を指し、当該事業場内での自ら直接再生利用した量や自ら中間処理した量等も含みます。一般的には、廃棄物の処理として何らの操作も加えない時点での量を指すとされていますが、事業活動の内容や廃棄物の種類によって重量が変化する場合も考えられます。このような事情も鑑み、一例として、汚泥については以下のような考え方が示されております。この例を参考に適切な発生量の把握時点を見極めましょう。
1.製品の生産工程又は一連のプロセスの中に脱水・乾燥工程が組み込まれている場合
→その脱水・乾燥工程の後の重量とする。
2.同一敷地内に脱水・乾燥施設があり、その目的が廃棄物処理としての汚泥の脱水・乾燥ととらえられる場合
→その脱水・乾燥工程の前の重量とする。
3. 施設から脱水・乾燥等の工程を経ずに発生する場合
→その発生時点での重量とする。
■電子マニフェストの一部義務化
2020年4月より、当該年度の前々年度の特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く)の発生量が50トン以上である事業場を設置している事業者が、その運搬や処分を他者に委託する場合には、電子マニフェストの使用が義務化されています(法第十二条の五第一項、法施行規則第八条の三十一の三)。
義務対象となるのは特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く)の処理を委託する場合のみであり、同一の事業場から発生するものであっても、普通の産業廃棄物やPCB廃棄物の処理を委託する際は紙マニフェストを使用しても問題ありません。
プラスチック資源循環促進法においても、「多量排出事業者」という概念が登場します。大きな違いは以下3点かと思いますが、細かな違いも含め、同じ「多量排出事業者」でも内容はまるで違いますので、どの法律に基づいた「多量排出事業者」なのかを根底におくようにしましょう。
以上、廃棄物処理法で定められている「多量排出事業者」について解説しました。
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