静脈トピックス 2024年4月2日

「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律案」の閣議決定(2024年3月)

2024年3月に閣議決定された、資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律案についてお知らせします。

はじめに

 2024年3月15日、政府は再資源化事業等の高度化により資源循環産業の発展を目指すため標題の新法案を閣議決定しました。この法律案は、現在開催中の通常国会(会期:1月26日~6月23日)で成立を目指す予定です。

環境省報道発表と新法の概要

引用元https://www.env.go.jp/press/press_02916.html
引用元https://www.env.go.jp/content/000208833.pdf

法案の背景

 この新法の背景には、気候変動や資源循環における昨今の情勢で、3つの背景があります。
(1)気候変動やカーボンニュートラルへの対応
 海洋プラスチック問題など昨今の気候変動をめぐる動きの中で、国全体でのカーボンニュートラルに向けた取り組みが進められています。
 そんな中、資源循環が日本のGHG 排出量の約 36%の排出削減に貢献できる可能性を持つ分野である、との試算もあり、脱炭素社会の実現に向けて、資源循環分野の取組の強化が求められています。

(2)産業競争力
 国は、2030 年までに、循環経済関連ビジネスの市場規模を、80 兆円以上にすることを目指すという目標を掲げており、資源循環は、今後大きな経済効果を生む可能性があるとして、成長が期待される分野となっています。
 また、国際的には
・国際標準化機構第 323 専門委員会(ISO/TC323)における循環経済分野の標準化の動き
・欧州における再生材の利用に係る定量目標等が決定される動き
など、欧州を中心に再生材の利用を求める動きが拡大しており、このような国際的な動向に国内産業界の対応が遅れると、日本企業の成長機会を失う可能性が高まります。
 このため、国内での良質な再生材の十分な確保と流通が不可欠な情勢となっています。

(3)経済安全保障への対応
 カーボンニュートラル達成に向けて、再エネ機器・EV 等の製造には金属資源などの様々な資源が不可欠となっています。しかし、それらの資源の多くが輸入に依存している状態であり、リチウム、コバルト、ニッケル等の一部の金属は、国際的な需要が今後ひっ迫する見込みとなっています。こうした状況下で、国内での資源循環の必要性・重要性がますます高まっています。

 このような背景のもと、新法制定の動きに繋がっています。

脱炭素型資源循環システム構築に向けた具体的な施策のあり方について(意見具申)(2024年2月)

引用元https://www.env.go.jp/content/000199106.pdf

法案の目的と構成

・法案の目的
 この法案は資源循環を進めていくため、製造側が必要とする質と量の再生材が確実に供給されるよう、再資源化の取り組みを高度化し、資源循環産業の発展を目指すことを目的としています。

高度化のイメージ(環境省資料)

・法案の構成
(1)基本方針の策定
(2)再資源化の促進
(3)再資源化事業等の高度化の促進

(1)基本方針の策定では、
 国が、再資源化事業等の高度化を促進するため、目指すべき目標を定めた基本方針を策定・公表し、施策の方向性を提示します。

(2)再資源化の促進では、
 ・国が、再資源化事業等の高度化の促進に関する判断基準の策定・公表します。
 ・国が、特に処分量の多い産業廃棄物処分業者の再資源化の実施状況を報告させ、公表します。その結果、国は、資源循環の促進に向けた情報基盤を整備し、製造業者等とのマッチング機会の創出により産業の底上げを図ります。

(3)再資源化事業等の高度化の促進では、
 先進事業を全国的に波及させるため、先進的な高度化の取り組みを国が一括認定する制度を創設し、廃棄物処理法の廃棄物処分業の許可等の各種許可の手続の特例を設けます。

 法案段階のため、今回は背景を中心に記載いたしましたが、今後、法制度の詳細など動向があれば、当サイトでも改めてお知らせいたします。

この記事の作成者

株式会社JEMS

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