現地確認とは、排出事業者が産業廃棄物の処理を他人に委託する場合に求められる、産業廃棄物の処理状況に関する確認のことです。廃棄物処理法では排出事業者の努力義務として規定されているほか、都道府県や政令市においてもその条例等で独自に規定されている場合もあります。
今回のトピックでは、全国129(2022年4月時点)の自治体における現地確認の条例規定状況についてご説明します。
現地確認の概要などの基本的な事項については、下記の記事をご覧ください。
現地確認とは
また、本ウェブサイトの「自治体データバンク」では、自治体ごとの現地確認義務の規定状況について整理しています。併せてご覧ください。
自治体データバンク
現地確認の具体的な手法等は、廃棄物処理法上では特段規定されていません。しかし、一般的には排出事業者が委託先業者の保管施設や処理施設まで赴いて、委託した産業廃棄物の処理状況を確認することとなっています。一方で、都道府県や政令市でも、その条例等で現地確認について独自に規定している場合があります。都道府県や政令市によっては、実地での確認や年に1回の確認を求めるなど、その具体的な手法まで明記していることもあります。
昨今のコロナ禍においては、オンラインを通じたリモートからの確認や、第三者による代行確認を認めている自治体も増えつつあります。
2021年8月、弊社では全国の産業廃棄物管掌自治体である129の自治体(2022年4月時点)における現地確認の条例規定状況をヒアリング調査し、未回答の2自治体を除く127の自治体から回答を受領しました。現地確認について、頻度や実施時期、手法等を具体的に条例等で規定しているかどうかという質問に対しては、全自治体のうち約4分の1の自治体から「規定している」という回答をいただきました。
たとえば岩手県や福島県では、委託した産業廃棄物の処分状況を、「実地に」確認しなければいけないと明記しています。
第22条
3 (略)排出事業者等は、その産業廃棄物の処分を委託したときは、当該産業廃棄物の処分の状況を1年に1回以上実地に確認し、その結果を記録しなければならない。
第6条
5 事業者は、その産業廃棄物の処理を委託する場合には、政令第6条の2又は政令第6条の6に規定する基準のほか次によるものとする。
(略)
(3) 産業廃棄物の処理を委託した後において、その処理が適正に行われるように当該処理業者の処理の状況を実地調査により確認し、その処理が適当でないと認めた場合は、当該処理業者に対し適正な処理を行うように指示すること。
一方で、北海道や宮城県などの自治体では、実地での確認義務は規定されているものの、事業者自らによる確認のほかに、事業者の代理人が確認した内容を聴取する方法も認めています。
第8条 条例第32条第1項の規定による確認は、当該委託に係る産業廃棄物の処分を受託した者(以下「処分受託者」という。)がその受託した処分を行う施設において事業者自ら又は事業者の代理人(処分受託者を除く。)が実地に調査する方法により行うものとする。
第二条 条例第八条第一項の規定による確認は、当該委託に係る産業廃棄物の処分を行う施設の稼働状況を自ら実地に調査し、又は当該委託に係る産業廃棄物の処分を行う施設を実地に調査した者(当該産業廃棄物の処分を受託しようとする者(以下「受託予定者」という。)を除く。)からその稼働状況を聴取した上で、次に掲げる事項を記録する方法により行うものとする。(略)
また富山県や広島県においては、その条例等では明確に規定していないものの、弊社が個別にヒアリング調査したところでは、オンラインを通じたリモートからの確認も有効な手段の一つであるとの見解を示しています。
それでは、オンラインを通じたリモートからの確認や、第三者による代行確認を行った場合、行政処分が下される可能性はあるのでしょうか。
こちらについてもそれぞれの自治体に照会したところ、明確に「想定していない」と回答した自治体は52%となりました。また、「条件付きで想定していない」と回答した自治体は27%でした。具体的な条件は自治体によって異なっており、たとえば、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、一時的に、公表されている維持管理の状況に関する情報を得る等の間接的な方法で行うことや、廃棄物処理法に基づき適正な処理がなされているのを実質的に確認できていること、などの回答がありました。
事例ごとの個別判断やそもそも回答いただけなかった自治体は21%でした。
排出事業者が処理業者の事業所等に直接赴かなかったという理由で行政処分が行われる可能性は少ないと考えられますが、現地確認の趣旨は、委託した産業廃棄物が適正に処理されるために必要な措置を講ずることであるということから、適切な手段により、確実に確認していく必要があるでしょう。
本ウェブサイトの「自治体データバンク」では、自治体ごとの現地確認義務の規定状況についてまとめておりますので、ぜひご参考にしてみてください。
自治体データバンク
また2022年6月には、デジタル庁にて、「目視」や「実地」、「巡視」、「見張人を配置」といったデジタル化を阻害するあらゆる規制の点検・見直しを進める計画が取り決められました。廃棄物処理法においても、①目視規制、②常駐専任、③定期検査、④往訪閲覧に関する条項について規制改革が行われる予定です。このような動きの中で、現地確認についても見直しが図られる見込みで、オンライン会議システム等を活用したリモートでの確認に移行されることが期待されます。
アナログ規制改革の詳細は、ぜひ過去の記事をご覧ください。
現地確認のリモート許容か アナログ規制改革が廃棄物処理法にもたらす影響とは
以上、全国129(2022年4月時点)の自治体における現地確認の条例規定状況についてご紹介しました。
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