静脈ゼミナール 廃棄物種類編 2022年4月1日

特別管理産業廃棄物の種類 1/2

 前回は、産業廃棄物の種類について触れ、その種類は、事業活動に伴って生じた産業廃棄物のうち、20の種類に分けられるということをお話しました。今回は、「特別管理産業廃棄物」の種類について紹介していきたいと思います。

法で定める特別管理産業廃棄物

 廃棄物処理法によれば、特別管理産業廃棄物とは、「産業廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するものとして政令で定めるもの」と定義されています。特別管理産業廃棄物はその性質から、排出から処理されるまでの間、特に取扱いに注意が必要となり、普通の産業廃棄物とは別の保管基準や処理基準が定められています。

5 この法律において「特別管理産業廃棄物」とは、産業廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するものとして政令で定めるものをいう。

引用元廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第2条第5項

 
 そして、爆発性や毒性、感染性を持つ廃棄物や、そのほかに人体に影響のある廃棄物の具体的な種類が、政令(=廃棄物処理法施行令)で定義されています。政令を確認すると、以下のように規定されています。

※一部抜粋
第二条の四 法第二条第五項(略)の政令で定める産業廃棄物は、次のとおりとする。
一 廃油(燃焼しにくいものとして環境省令で定めるものを除く。)
二 廃酸(著しい腐食性を有するものとして環境省令で定める基準に適合するものに限る。)
三 廃アルカリ(著しい腐食性を有するものとして環境省令で定める基準に適合するものに限る。)
四 感染性産業廃棄物(略)
五 特定有害産業廃棄物(次に掲げる廃棄物をいう。)
 イ 廃ポリ塩化ビフェニル等(略)
 ロ ポリ塩化ビフェニル汚染物(略)
 (略)
 ハ ポリ塩化ビフェニル処理物(略)
 ニ 廃水銀等(略)
 ホ 指定下水汚泥(略)及び当該指定下水汚泥を処分するために処理したもの(略)
 ヘ 鉱さい(略)及び当該鉱さいを処分するために処理したもの(略)
 ト 廃石綿等(略)
 チ ばいじん(略)及び当該ばいじんを処分するために処理したもの
 (略)
 リ 次に掲げるばいじん又は燃え殻(略)及びこれらの廃棄物を処分するために処理したもの(略)
 ヌ 次に掲げる廃油及び当該廃油を処分するために処理したもの(略)
 ル 次に掲げる汚泥、廃酸又は廃アルカリ(略)及びこれらの廃棄物を処分するために処理したもの(略)
六 法第二条第四項第二号に掲げる廃棄物の焼却施設(略)において発生するばいじんであつて集じん施設によつて集められたもの及び当該ばいじんを処分するために処理したもの(略)
七 別表第三の一〇の項に掲げる施設において法第二条第四項第二号に掲げる廃棄物の焼却に伴つて生じたばいじん(略)又は燃え殻(略)及びこれらの廃棄物を処分するために処理したもの(略)
八 別表第三の一〇の項に掲げる施設において法第二条第四項第二号に掲げる廃棄物の焼却に伴つて生じた汚泥(略)であつてダイオキシン類を含むもの(略)及び当該汚泥を処分するために処理したもの(略)
九 ばいじん(集じん施設によつて集められたものであつて、法第二条第四項第二号に掲げる廃棄物であるものに限る。)
十 燃え殻(法第二条第四項第二号に掲げる廃棄物であるものに限る。)であつてダイオキシン類を含むもの(略)
十一 汚泥(法第二条第四項第二号に掲げる廃棄物であるものに限る。)であつてダイオキシン類を含むもの(略)

引用元廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令 第2条の4

 
 実際には、政令別表や環境省令(=廃棄物処理法施行規則)のなかでも、発生する産業廃棄物の排出事業場の条件や、産業廃棄物に含まれる有害物質の種類やその割合などがより詳細に定義されています。

 上記のことをまとめると、特別管理産業廃棄物は大まかに、以下のように分けることができます。個々の廃棄物種類について、さらに詳しく見ていきましょう。

特別管理産業廃棄物の4分類・5品目

引火性廃油

 政令の第一号として「燃焼しにくいものとして環境省令で定めるものを除く。」と定義されています。燃焼しにくいものとして環境省令で定めるものを除いた廃油とは具体的にどのような廃油を指すのでしょうか。「引火性廃油」や「燃焼性の廃油」、「燃えやすい廃油」など様々な名称で呼ばれていますが、ここでは「引火性廃油」という名称を用いて説明します。環境省令(第一条の二第一号)の規定内容を見てみると、「廃油(略)のうち、揮発油類、灯油類及び軽油類を除くもの」と記載されています。「揮発油類、灯油類及び軽油類」、つまり通常の産業廃棄物の廃油を除いた廃油ということですから、揮発油類や灯油類、軽油類が引火性廃油に該当します。また、具体的な引火点としては、70℃未満の廃油を指します。

引火点70℃未満の廃油

腐食性の廃酸・廃アルカリ

 また、著しい腐食性を有する廃酸(強廃酸)とは、環境省令(第一条の二第2項)によれば、酸性の廃棄物のうち水素イオン濃度指数(pH)が2.0以下の廃酸のことです。たとえば、バッテリーの電解液や胃液などが該当します。同様に、著しい腐食性を有する廃アルカリ(強廃アルカリ)とは、アルカリ性の廃棄物のうちpHが12.5以上の廃アルカリのことを指します(環境省令(第一条の二第3項))。漂白剤や排水管洗剤などが当てはまります。反対に、これらの定義に当てはまらない廃酸または廃アルカリは、特別管理産業廃棄物ではなく、通常の産業廃棄物に該当します。

pH2.0以下の廃酸とpH12.5以上の廃アルカリ

感染性産業廃棄物

 感染性廃棄物とは、病院や診療所、介護老人保健施設などの医療関係機関などから出た廃棄物のことであり、感染性病原体が含まれていたり、付着したりしている廃棄物のことを指します。たとえば、注射針やメス、輸血セット等の医療器材が該当します。環境省が作成した「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」によれば、感染性廃棄物の具体的な判断は、「形状の観点」、「排出場所の観点」、「感染症の種類の観点」の3つの観点から行うとされています。

感染性廃棄物の具体的な判断に当たっては、1、2又は3によるものとする。
1 形状の観点
 (1) 血液、血清、血漿及び体液(精液を含む。)(以下「血液等」という。)
 (2) 手術等に伴って発生する病理廃棄物(摘出又は切除された臓器、組織、郭清に伴う皮膚等)
 (3) 血液等が付着した鋭利なもの
 (4) 病原微生物に関連した試験、検査等に用いられたもの

2 排出場所の観点
 感染症病床、結核病床、手術室、緊急外来室、集中治療室及び検査室(以下「感染症病床等」という。)において治療、検査等に使用された後、排出されたもの

3 感染症の種類の観点
 (1) 感染症法の一類、二類、三類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症及び新感染症の治療、検査等に使用された後、排出されたもの
 (2) 感染症法の四類及び五類感染症の治療、検査等に使用された後、排出された医療器材、ディスポーザブル製品、衛生材料等(ただし、紙おむつについては、特定の感染症に係るもの等に限る。)

引用元環境省 廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル 平成30年3月
感染性産業廃棄物

 今回は、特別管理産業廃棄物の種類として、廃棄物処理法で定められている種類の概要と、個別の廃棄物種類として、「引火性廃油」、「腐食性の廃酸・廃アルカリ」、「感染性産業廃棄物」の3つの廃棄物種類に着目してご説明しました。次回は、その他の特別管理産業廃棄物の種類について焦点を当てていきたいと思います。

この記事の作成者

株式会社JEMS つくば本社
担当: 鮏川(すけがわ)
URL: https://www.j-ems.jp/

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