静脈ゼミナール 委託契約書編 2022年4月20日

産業廃棄物の処理委託契約について

 委託契約の締結は、産業廃棄物の処理を他者へ委託する際に必要な事項の一つとして、廃棄物処理法で定められています。今回は、委託契約の締結に関する基本的な事項についてご説明します。

契約はそれぞれの業者と行う

 産業廃棄物の処理を他者に委託する際には、委託基準に従わなければなりません。前回のトピックでは、委託基準の一つとして、産業廃棄物処理業の許可を受けた業者へ委託する必要があることについて触れました。今回は、委託契約の締結に関する基本的な事項について触れていきたいと思います。

 産業廃棄物の処理を他者へ委託するときには、一部の例外を除き、産業廃棄物処理業の許可を受けた業者に委託します。このとき、産業廃棄物の収集運搬を委託する際には収集運搬業の許可を受けた業者に、処分を委託する際には処分業の許可を受けた業者に、それぞれ委託する必要があります(廃棄物処理法第十二条第五項)。

5 事業者(略)は、その産業廃棄物(略)の運搬又は処分を他人に委託する場合には、その運搬については第十四条第十二項に規定する産業廃棄物収集運搬業者その他環境省令で定める者に、その処分については同項に規定する産業廃棄物処分業者その他環境省令で定める者にそれぞれ委託しなければならない。

引用元廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第12条第5項(2022年4月現在)

 収集運搬業者や処分業者に処理を委託する場合は、委託契約の締結が必要です。廃棄物処理法では、委託契約は「書面により行うこと」と規定されているものの、電子契約も認められています。電子契約についての詳細な説明は、今回の記事では割愛させていただきます。

 また、契約を締結する際には、収集運搬業者、処分業者のそれぞれと締結することが原則的な運用になります。排出事業者・収集運搬業者・処分業者の三者で契約を締結することについては、それ自体が否定されているわけではありません。しかし、三者契約によって、排出事業者が処理業者の事業範囲を確認しなかったり、処理業者へ適正な委託料金を支払わなかったりすることで、廃棄物の不適正処理に繋がってしまうリスクも孕んでいますので、収集運搬業者、処分業者のそれぞれと締結することが廃棄物処理法の趣旨に則した運用になるといえるでしょう。

それぞれの業者と契約を結ぶ

契約書の法定記載事項

 廃棄物処理法では、委託基準の一つとして、委託契約書に記載しなければならない事項が規定されています。これらの事項は法定記載事項ともよばれます。法定記載事項が契約書内に盛り込まれていない場合、委託基準違反となってしまうため、注意が必要です。

第六条の二 法第十二条第六項の政令で定める基準は、次のとおりとする。

(中略)

四 委託契約は、書面により行い、当該委託契約書には、次に掲げる事項についての条項が含まれ、かつ、環境省令で定める書面が添付されていること。
 イ 委託する産業廃棄物の種類及び数量
 ロ 産業廃棄物の運搬を委託するときは、運搬の最終目的地の所在地
 ハ 産業廃棄物の処分又は再生を委託するときは、その処分又は再生の場所の所在地、その処分又は再生の 方法及びその処分又は再生に係る施設の処理能力
 ニ 産業廃棄物の処分又は再生を委託する場合において、当該産業廃棄物が法第十五条の四の五第一項の許可を受けて輸入された廃棄物であるときは、その旨
 ホ 産業廃棄物の処分(最終処分(法第十二条第五項に規定する最終処分をいう。以下同じ。)を除く。)を委託するときは、当該産業廃棄物に係る最終処分の場所の所在地、最終処分の方法及び最終処分に係る施設の処理能力
 ヘ その他環境省令で定める事項

引用元廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令 第6条の2第4号(2022年4月現在)

 政令(廃棄物処理法施行令)における、「ヘ その他環境省令で定める事項」については、以下のとおりです。

第八条の四の二 令第六条の二第四号ヘ(令第六条の十二第四号の規定によりその例によることとされる場合を含む。)の環境省令で定める事項は、次のとおりとする。

一 委託契約の有効期間
二 委託者が受託者に支払う料金
三 受託者が産業廃棄物収集運搬業又は産業廃棄物処分業の許可を受けた者である場合には、その事業の範囲
四 産業廃棄物の運搬に係る委託契約にあつては、受託者が当該委託契約に係る産業廃棄物の積替え又は保管を行う場合には、当該積替え又は保管を行う場所の所在地並びに当該場所において保管できる産業廃棄物の種類及び当該場所に係る積替えのための保管上限
五 前号の場合において、当該委託契約に係る産業廃棄物が安定型産業廃棄物であるときは、当該積替え又は保管を行う場所において他の廃棄物と混合することの許否等に関する事項
六 委託者の有する委託した産業廃棄物の適正な処理のために必要な次に掲げる事項に関する情報
 イ 当該産業廃棄物の性状及び荷姿に関する事項
 ロ 通常の保管状況の下での腐敗、揮発等当該産業廃棄物の性状の変化に関する事項
 ハ 他の廃棄物との混合等により生ずる支障に関する事項
 ニ 当該産業廃棄物が次に掲げる産業廃棄物であつて、日本産業規格C〇九五〇号に規定する含有マークが付されたものである場合には、当該含有マークの表示に関する事項
 (1) 廃パーソナルコンピュータ
 (2) 廃ユニット形エアコンディショナー
 (3) 廃テレビジョン受信機
 (4) 廃電子レンジ
 (5) 廃衣類乾燥機
 (6) 廃電気冷蔵庫
 (7) 廃電気洗濯機
 ホ 委託する産業廃棄物に石綿含有産業廃棄物、水銀使用製品産業廃棄物又は水銀含有ばいじん等が含まれる場合は、その旨
 ヘ その他当該産業廃棄物を取り扱う際に注意すべき事項
七 委託契約の有効期間中に当該産業廃棄物に係る前号の情報に変更があつた場合の当該情報の伝達方法に関する事項
八 受託業務終了時の受託者の委託者への報告に関する事項
九 委託契約を解除した場合の処理されない産業廃棄物の取扱いに関する事項

引用元廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則 第8条の4の2(2022年4月現在)

 収集運搬契約、処分契約のそれぞれにおいて必要な項目は、以下のように分類されます。

法定記載事項(収集運搬契約・処分契約での共通項目) 具体例
・委託する産業廃棄物の種類、数量 廃棄物処理法上の種類を記載する(例:汚泥)。数量は計量した重量(例:〇t)や車両台数(例:〇台)などを記載する。
・委託契約の有効期間 契約の開始年月日と終了年月日を記載する。自動更新の旨を記載することも可能。
・委託者が受託者に支払う料金 廃棄物の単価を記載したり、1ヵ月などの期間単位で記載したりする。
・受託者の事業の範囲 業許可の発出自治体や有効期限、許可の条件などを記載する。
・産業廃棄物の適正な処理のために必要な事項に関する情報 WDS(廃棄物データシート)を添付することで代用が可能。
 イ 産業廃棄物の性状、荷姿について 固形状・泥状といった性状や、コンテナ・バラといった荷姿を記載する。
 ロ 通常の保管状況の下での性状の変化について 腐敗や、揮発ガスの発生などの情報を記載する。
 ハ 他の廃棄物との混合等による支障について 悪臭の発生や爆発などの情報を記載する。
 ニ 日本産業規格C0950号に規定する含有マークの表示について 含有マークがついている廃製品の処理を委託する場合は、そのマークがついている旨を記載する。
 ホ 石綿含有産業廃棄物、水銀使用製品産業廃棄物、水銀含有ばいじん等が含まれる場合、その旨について 石綿含有産業廃棄物等が含まれる廃棄物の処理を委託する場合は、その旨を記載する。
 ヘ その他、取り扱う際に注意すべき事項
・委託契約の有効期間中に産業廃棄物の性状などの情報に変更があつた場合の伝達方法 変更内容を記したWDS(廃棄物データシート)等を書面で提出する旨などを記載する。
・受託業務終了時の委託者への報告方法 紙マニフェストのB2票の返送や、電子マニフェストの運搬終了報告で代えることができるなどの旨を記載する。
・委託契約を解除した場合の処理されない産業廃棄物の取扱いついて 契約当事者のうちどちらの責任で処理するかを記載する。

法定記載事項(収集運搬契約のみの項目) 具体例
・運搬の最終目的地の所在地 積替え保管施設を経由する場合、最終目的地が積替え保管施設になる場合もある。
・(積替え保管を行う場合)積替え保管場所の所在地、保管できる産業廃棄物の種類、保管上限 収集運搬業許可証に記載の内容と合致しているか確認し記載する。
・(積替え保管を行う場合)安定型産業廃棄物のときは、他の廃棄物と混合することの許否など 他の安定型産業廃棄物と混合する可能性があるかどうかを記載する。

法定記載事項(処分契約のみの項目) 具体例
・処分(再生)の場所の所在地、処分(再生)方法、処理能力 処分業許可証に記載の内容と合致しているか確認し記載する。
・(輸入廃棄物を委託する場合)その旨 産業廃棄物が輸入された廃棄物である場合は、その旨を記載する。
・(最終処分を委託する場合)最終処分の場所の所在地、最終処分方法、処理能力 処分業許可証に記載の内容と合致しているか確認し記載する。

 
 法定記載事項は廃棄物処理法で規定されているものの、契約書中における具体的な表現は契約の当事者に委ねられており、契約書のフォーマットも同法で指定されているわけではありません。そこで、全国産業資源循環連合会などの業界団体や各自治体が契約書のフォーマットを用意しています。これらのフォーマットを使用することで、基本的には法定記載事項を網羅した契約を結ぶことができるようになっていますが、念のため契約の当事者においても法定記載事項がすべて記載されているかどうかを確認することが重要です。

業許可証の添付や契約書の保存義務も

 委託契約書には、産業廃棄物処理業の許可証の添付も必要です。事業範囲や発出自治体が、委託内容と合致している業許可証を添付します。

第八条の四 令第六条の二第四号(令第六条の十二第四号の規定によりその例によることとされる場合を含む。)の環境省令で定める書面は、次の各号に掲げる委託契約書の区分に応じ、それぞれ当該各号に定めるものとする。

一 産業廃棄物の運搬に係る委託契約書 第十条の二に規定する許可証の写し(中略)
二 産業廃棄物の処分又は再生に係る委託契約書 第十条の六に規定する許可証の写し(中略)

引用元廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則 第8条の4(2022年4月現在)

 また、委託契約書や添付している業許可証は、契約終了から5年間保管する義務も廃棄物処理法で規定されています。産業廃棄物の処理委託契約書では、自動更新契約が使用されている場合もあります。その場合は、その契約が有効である限り、保管し続ける必要があります。

五 前号に規定する委託契約書及び書面をその契約の終了の日から環境省令で定める期間保存すること。

引用元廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令 第6条の2第5号(2022年4月現在)

第八条の四の三 令第六条の二第五号(令第六条の十二第四号の規定によりその例によることとされる場合を含む。)の環境省令で定める期間は、五年とする。

引用元廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則 第8条の4の3(2022年4月現在)
委託契約を結ぶ際のポイント

この記事の作成者

株式会社JEMS つくば本社
担当: 鮏川(すけがわ)
URL: https://www.j-ems.jp/

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