静脈ゼミナール 行政処分編 2022年8月23日

実際にあった過去の行政処分事例から学ぶ(1/2)【静脈ゼミナール】

 廃掃法に基づく行政処分には、主に業許可の取消、事業の停止、措置命令、改善命令が挙げられます。一般的に処分内容の重さは「業許可の取消>事業の停止>措置命令>改善命令」となり、それぞれの要件が異なるのはもちろんのこと、対象者の範囲も異なり、また、統計を取ると発生件数にも大きな差があることが見て取れます。

 本トピックでは、法令や通知、弊社が独自に収集した過去5年間の行政処分情報を参考に、その体系や統計情報、実際にあった過去の事例などを全2回に分けて解説いたします。

業許可の取消と事業の停止

 産業廃棄物処理業の許可制度は、産業廃棄物の適正な処理を確保するため、事業の用に供する施設と事業を行う者の能力が事業を的確かつ継続的に行うに足りるものとして一定の基準に適合すると認められるときに限って許可されます。

 そのため、廃掃法では、処理業者がこの基準に適合しなくなった場合に業許可の取消や事業の停止を命ずることが“できる”権限を都道府県や政令市長に与えており、さらに、業許可を取り消す場合として定める要件に処理業者が該当した場合には、都道府県知事や政令市長は、その業許可を取り消さなければ“ならない”としています。

「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」を元に加工・作成

 ここでいう「違反行為」とは、法又は法に基づく処分に違反する行為をいい、それによって刑事処分や行政処分を受けていること、捜査機関による捜査や公訴が提起されて公判手続が進行中であることなどは考慮されず、客観的な事実が評価されます。

 また、ここでいう「情状が特に重いとき」とは、不法投棄や無許可営業、委託基準違反などの重大な法違反を行った場合や違反行為を繰り返し行い是正が期待できない場合をいい、違反行為の態様や回数、違反行為による影響、行為者の是正可能性、行政処分を行う自治体の個別判断基準等の諸々の事情から判断されます。

 実際に、環境省は自治体が行政処分を行う際の基準について通知を発出しており、前述のとおり不法投棄や無許可営業、委託基準違反などの場合には業許可の取消を、マニフェストの返送義務違反や記載義務違反、帳簿備え付け義務違反などの場合には事業の停止を行うように呼び掛けています。

 自治体側でも当該通知に基づいた行政処分要綱などを独自に作成し公表していることがありますので、一度所管の自治体の要綱を確認し、どのような基準を設けているのか確認してみましょう。

措置命令と改善命令

 業許可の取消や事業の停止は処理業者が対象である一方、措置命令と改善命令については排出事業者もその対象となり得ます。

 廃掃法では、処理基準又は保管基準に適合しない処理が行われた場合に、生活環境の保全上の支障を生じ、又は生ずるおそれがあるときは、必要な限度においてその支障の除去又は発生の防止のために必要な措置を講ずるように命ずることができる権限が都道府県や政令市長に与えられており、同様に、処理基準又は保管基準に適合しない処理が行われた場合には、その適正な処理の実施を確保するため、処理の方法の変更やその他必要な措置を講ずるように命ずることができる権限が都道府県や政令市長に与えられています。

 どちらも「処理基準又は保管基準に適合しない処理が行われた場合」に出されることから、一見措置命令と改善命令には差が無いように見受けられますが、これらの違いを平たく言うと「具体的な支障が発生しているかどうか」になります。

「行政処分の指針について(通知)」を元に加工・作成

過去5年間の行政処分件数

 2017年7月から2022年7月の過去5年間で発生した行政処分情報を弊社が独自に収集・調査したところ、排出事業者及び産業廃棄物処理業者に対して出された行政処分(業許可の取消、事業の停止、措置命令、改善命令)の各種件数は以下の通りとなりました。業許可の取消件数の多さが目を引きますが、事業の停止を受けた処理業者も一定数存在することがお分かりいただけるかと思います。

JEMS独自調査結果を元に加工・作成

おわりに

 ある程度要件が明確な業許可の取消とは異なり、事業の停止や措置命令、改善命令はどのような場合に当該処分が行われるのか分かりづらいかもしれません。一例として、マニフェストを返送しなかった場合には事業の停止の対象に、保管上限を超過した場合には措置命令の対象になり得ますが、「マニフェストを○○枚返送しなかったために事業の停止を受けた、〇〇立方メートル保管上限を超過したために措置命令を受けた」などの具体的な事例については、第2回目のコラムでご紹介させていただきます。

 「実際にあった過去の行政処分事例から学ぶ(全2回)」の第1回目は以上となります。行政処分の体系と具体的な事例を学び、自社がリスクのある運用を行っていないか再確認してみましょう。

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この記事の作成者

株式会社JEMS
担当: 野口(のぐち)
URL: https://www.j-ems.jp/

上記記事の参考引用サイト

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