現地確認とは、排出事業者が産業廃棄物の処理を他人に委託する場合に求められる、産業廃棄物の処理状況に関する確認のことです。一般的に、排出事業者が委託先業者の保管施設や処理施設まで赴いて、施設の維持管理が施されているか、廃棄物の飛散や流出、地下浸透を防止するための措置が講じられているかなどといった事項を確認することから、「現地確認」や「実地確認」などと表現されます(本記事では「現地確認」という呼称を用います)。
廃棄物処理法においては排出事業者の努力義務として規定されているほか、都道府県や政令市においてもその条例等で独自に規定されている場合もあります。
今回のトピックでは、現地確認についてご説明します。
また、本ウェブサイトの「自治体データバンク」では、自治体ごとにおける現地確認義務の規定状況について整理していますので、ぜひご覧ください。
自治体データバンク
廃棄物処理法では、排出事業者が産業廃棄物の処理を他人に委託する場合、産業廃棄物の処理状況に関して確認する必要があると規定されています。その具体的な確認手段等については特段規定されていないものの、原則としては、排出事業者自身が委託先処理業者の保管施設や処理施設まで赴いて処理状況を確認することを前提としています。
7 事業者は、前二項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、当該産業廃棄物の処理の状況に関する確認を行い、当該産業廃棄物について発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない。
廃棄物処理法上は、現地確認はあくまで努力義務として規定されていますが、都道府県や政令市においても、その条例等で独自に規定されている場合があります。都道府県や政令市が現地確認を義務として規定している場合は、排出事業者はその条例等で定められた頻度や方法に従って、必ず委託した産業廃棄物の処理状況を確認しなければなりません。
たとえば岩手県では、「循環型地域社会の形成に関する条例」の中で、委託した産業廃棄物の処分状況を、1年に1回以上実地に確認しなければいけないと規定しています。
(排出事業者等の責務等)
第22条 その事業活動に伴い産業廃棄物を生ずる事業者(略)は、産業廃棄物の運搬又は処分(略)を委託しようとするときは、あらかじめ、規則で定めるところにより、受託者が当該産業廃棄物を適正に処理する能力を備えていることの確認(略)を行い、その結果を記録しなければならない。
(略)
3 第1項の排出事業者等は、その産業廃棄物の処分を委託したときは、当該産業廃棄物の処分の状況を1年に1回以上実地に確認し、その結果を記録しなければならない。
また広島市では、市の条例等では制定していないものの、広島県が規定する「生活環境の保全等に関する条例」により実地確認を求めています。
(事業者の責務)
第八十六条 事業者は、産業廃棄物の処理を委託しようとするときは、受託者から運搬車両、保管施設、処理施設等の状況を聴取する方法その他の規則で定める方法により、受託者が当該産業廃棄物を適正に処理する能力を備えていることを確認しなければならない。
本ウェブサイトの「自治体データバンク」では、自治体ごとにおける現地確認の規定状況についてまとめていますので、ご参考にしていただけましたら幸いです。
自治体データバンク
では、現地確認の際には具体的にどのようなことを確認すればよいのでしょうか。具体的な確認事項については、廃棄物処理法上では特段規定されていないものの、(公社)全国産業廃棄物連合会や各自治体では、チェックリストを作成し案内しています。
たとえば、処理業許可や施設の設置許可が有効であるか、行政から改善命令や措置命令などの指導を受けていないか、委託契約書や帳簿、マニフェストなどの書面を記載し適切に保管しているか、といったことが確認事項として挙げられています。
現地確認で確認するべきことについては、下記「さんぱいQ&A」の記事でもご紹介していますので、併せてご参考にしてください。
現地確認では何をチェックすればいいの?
また、昨今のコロナ禍においては、オンラインを通じたリモートからの確認や第三者による代行確認を認めている自治体もあります。
2021年8月時点において弊社が調査したところでは、ある自治体においては、新型コロナウイルスの影響により実地での確認が困難な場合は、リモート等の代替手段を講じることを認めています。
▼自治体見解①
新型コロナウイルスの影響により、実地調査が困難な場合は、リモート等の代替手段を講じ、新型コロナウイルスの影響が落ち着いた時には速やかに実地調査を行うようお願いしています。
▼自治体見解②
委託先の施設の状況を実地で確認することが基本となりますが、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点からも、公表されている維持管理の状況に関する情報を得る等の間接的な方法で行うことが考えられます。
また愛知県では、「廃棄物の適正な処理の促進に関する条例のあらまし」の中で、排出量が少量かつ処理先が遠隔地にある場合等の理由により、自らが実地確認を行うことが困難である場合は、代理人に実地確認をさせ、報告を受ける方法によって行うことも可能であるとしています。
Q12 排出量が少量で、かつ、処理先が遠隔地にある場合でも条例に基づく確認は必要か。
A12 必要です。なお、自らが実地確認を行うことが困難である場合は、代理人に実地確認をさせ、報告を受ける方法によって行うことも可能です。
また2022年6月、デジタル庁にて、「目視」や「実地」、「巡視」、「見張人を配置」といったデジタル化を阻害するあらゆる規制の点検・見直しを進める計画が取り決められました。廃棄物処理法においても、①目視規制、②常駐専任、③定期検査、④往訪閲覧に関する条項について規制改革が行われる予定です。
このような動きの中で、現地確認についても見直しが図られる見込みで、オンライン会議システム等を活用したリモートでの確認に移行されることが期待されます。現時点では、できる限り排出事業者が現地へ赴いて確認することを求める自治体も依然として多くありますが、規制改革に伴い、リモートでの処理状況確認が一般的に認められるようになれば、現地確認の手段もさらに柔軟になることでしょう。
アナログ規制改革の詳細は、ぜひ過去の記事をご覧ください。
現地確認のリモート許容か アナログ規制改革が廃棄物処理法にもたらす影響とは
以上、現地確認についてご紹介しました。
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