静脈ゼミナール 廃棄物編 2023年1月30日

廃棄物該当性と総合判断説

 廃棄物とは、占有者が自ら利用し、または他人に有償で譲渡することができないために不要となったもののことです。廃棄物に該当するか否かは、①その物の性状、②排出の状況、③通常の取扱い形態、④取引価値の有無、そして⑤占有者の意思等を総合的に勘案して判断すべきものである(=総合判断説)とされています。

 今回のトピックでは、廃棄物該当性の判断について、総合判断説を交えてご説明します。

 廃棄物の定義や分類については下記の記事でも解説していますので、併せてご覧ください。
 廃棄物とは

廃棄物処理法上の定義

 廃棄物処理法では、廃棄物は「汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの」と定義されているものの、その具体的な判断基準については触れられていません。

 この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。

引用元廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第二条第一項(2023年1月現在)



 一方、環境省が都道府県や政令市の産業廃棄物行政主管部(局)長に宛てた通知では、廃棄物該当性の判断について次のような補足が加えられています。

総合判断説に基づいて判断される

 環境省の通知によれば、廃棄物に該当するか否かは、①その物の性状、②排出の状況、③通常の取扱い形態、④取引価値の有無、そして⑤占有者の意思等を総合的に勘案して判断すべきものであるとされており、このことは一般的に「総合判断説」と呼ばれています。

総合判断説



 同通知が発出される以前においては、本来廃棄物である物を有価物と称して、廃棄物処理法の規制を免れようとする事案が後を絶ちませんでした。このような事案に適切に対処するため、廃棄物の疑いのあるものについては、これらの判断要素の基準に基づいて総合的に勘案してその物が有価物と認められるか否かを判断し、有価物と認められない限りは廃棄物として扱う必要があると注意喚起しています。

無償で引き取られる場合は?

 総合判断説の一つとして挙げられている「取引価値の有無」については、具体的に、「当該譲渡価格が競合する製品や運送費等の諸経費を勘案しても双方にとって営利活動として合理的な額であること」という基準が設けられています。

 それでは、占有者が不要であると判断したものを、運搬費用を先方業者持ちとしたうえで無償で引き取ってもらう場合は、廃棄物として扱う必要があるのでしょうか。無償での引き取りについては自治体や有識者の中でも見解が分かれており、たとえば東京都※1や高崎市※2では、その公式HP上で、下記のような見解を示しています。

▼東京都(一部抜粋)
不適正事例:無償での引き取り
不要になった物を、無償で引き取ると業者が言うので、引き取ってもらった。

解説:
「占有者が自ら利用し、又は他人に有償で売却することができないため不要になった物をいう。」と定義されています。無償の場合は、廃棄物に該当します。

引用元※1 東京都 廃棄物の定義に関する不適正事例(2023年1月現在)

▼高崎市(一部抜粋)
 産業廃棄物を無償で有用に活用する者がいる場合、有用に活用できる状態になるまでの間は、廃棄物処理法で定める廃棄物に該当します。有用に活用できるよう運搬や加工を第三者に委託する場合は、産業廃棄物の処理に該当しますので、適正な処理委託をしなければなりません。ただし、加工が不要であり無償で有用に活用する者が引き取る場合は、物品又は製造品の譲与となり、産業廃棄物の処理ではありません。

引用元※2 高崎市 産業廃棄物処理委託マニュアル(第4版) P16(2023年1月現在)



 有価物として運用を行ったものの廃棄物として判断されてしまった場合には、不適切処理として罰則を受ける可能性もあります。不要となったものの廃棄物該当性について判断に迷う場合は、管轄自治体の見解等も参照したうえで適切に運用することが必要です。


 以上、廃棄物該当性の判断について、総合判断説を交えてご説明しました。
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この記事の作成者

株式会社JEMS つくば本社
担当: 鮏川(すけがわ)
URL: https://www.j-ems.jp/

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