プロダクトパスポートとは【コラム】 2022年10月3日

プロダクトパスポート(DPP)とは【コラム】

 プロダクトパスポート(デジタル製品パスポート(digital product passport) DPP )とは製品に紐づけられる使用材料や製造企業だけでなく、耐久性やリサイクルの容易性といった情報を付与する制度で、欧州新サーキュラーエコノミープランのSPI関連法案の具体策として整備される制度です。

 サーキュラーエコノミーの概要と、これまでの経済モデルとのちがいは、過去のコラム「サーキュラーエコノミーとは?」をご参照ください。
 サーキュラーエコノミーと3Rのちがいは、過去のコラム「サーキュラーエコノミーと3Rは何がちがうのか」をご参照ください。

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デジタル製品パスポート(プロダクトパスポート)とは

 デジタル製品パスポート(プロダクトパスポート)とは製品に紐づけられる使用材料や製造企業だけでなく、耐久性やリサイクルの容易性といった情報を付与する制度で、欧州新サーキュラーエコノミープランのSPI関連法案の具体策として、2022年3月30日欧州委員会より発表された、持続可能な製品政策枠組みのパッケージの第1弾に含まれる情報開示制度です。

 対象製品に共通して求められる耐久性、再利用可能性、改良・修理可能性、エネルギー効率性などの各種基本要件および消費者のための情報開示などが義務付けられます。
 2022年末までに、環境影響の大きい分野を中心に、優先的に委任立法を進める製品分野の選定を進めるためのパブリックコンサルテーションを実施し、優先分野として、繊維製品、家具、タイヤなどの消費財に加え、鉄鋼・アルミニウム製品など中間財も候補に挙がっています。

 規則案では、新たに製品情報を電子的手段で集約した「デジタル製品パスポート」を製品自体、パッケージまたは製品に付属する書類上に添付することを義務付けられ、製品の修理・メンテナンスやリサイクルなど製品のライフサイクル全体を念頭に、消費者だけでなく、輸入者・販売者、修理・リサイクル業者、公的機関などが必要とする各種情報の書き込みが求められる見込みです。


欧州サーキュラーエコノミープランのこれまでの流れ

 プロダクトパスポートの制度設立の背景を理解するために、欧州のサーキュラーエコノミープランの流れを簡単におさらいしておきましょう。

C/Eの流れ JEMS作成

 2015年にEUから循環型経済行動計画が発表されました。これは2030年に向けた成長戦略としての54の政策パッケージで、様々な目標設定、規制や投資がなされました。
 また、サーキュラーエコノミーの概念が世界へ広がりました。

 プラスチックや食品廃棄物等の重点項目を設定し、生産・消費・廃棄物管理などを通じた、資源の効率的・循環的な利用を政策的に実現するアクションプランを採用しました。

 2019年には、2050年までの温室効果ガス(GHG)の排出量実質ゼロ(気候中立)の達成や、経済成長と資源利用のデカップリング(切り離し)などを目標として掲げるグリーンディールを発表しました。
 これは単なる環境政策に留まらず、エネルギー安全保障、生物多様性、農業や輸送など様々な社会システムの方向性に踏み込んだ野心的な内容となります。

画像引用:欧州連合日本政府代表部 「EU情勢概要」

 2020年には、新循環型経済行動計画が公表されました。これは2015年の循環型経済行動計画のバージョン2ともいうべきもので、サーキュラーエコノミーへのシフトをさらに推進させるための具体策を含んだ内容であり、また2019年のグリーンディールの実行のための柱としての側面もあります。

 重点項目は以下の3つとなります。
・持続可能な製品の立法イニシアチブ(SPI)
・消費者の権利の強化(エンパワーメント)
・重点分野(電子機器とICT・バッテリーと車・包装・プラスチック・テキスタイル・建築・食)の取り組み強化

画像引用:EU  「CEAP」

SPIとエコデザイン規則案

 2020年の新循環型経済行動計画で重点項目とされた持続可能な製品の立法イニシアチブ(SPI)は、2022年3月に発表されました。
 これは、EU内で流通する様々な製品が、サスティナブルな製品として投入されるための、様々な要求を定義したものです。

 SPIには複数の政策パッケージが含まれていますが、その中に「エコデザイン規則案」というものがあります。
 2009年に制定されたエコデザイン指令を強化拡充させるもので、エコデザイン指令の対象とされていなかった製品へ対象を広げるともに、様々な変更が加えられる案となっています。



「指令」を「規則」に格上げすることで、実効性を強化することが一つ目の変化です。
  ※EUでの「指令」は加盟国の国内法を別途制定する必要がありますが、「規則」については内国法と同等の拘束力を持つ、より上位のルールとなります。

引用:国立国会図書館「リサーチ・ナビ」

 

 そして、このエコデザイン規則案の内容の一つとして、デジタル製品パスポート制度の導入が含まれています。
 先行して取り組む領域については、早ければ来年(2023年)より、具体的な施策が発表されることと思われます。

製品パスポートの事例

 欧州委員会で進められているプロダクトパスポートについては、前述のとおりですが、製品パスポートという概念自体には先行する分野があります。
 その一つが、バッテリー(電池)パスポートです。

 現在、ドイツでは電池パスポートの開発支援を行うことを発表しています
 
  JETRO  「ドイツ政府、蓄電池の全ライフサイクル情報を記録する「パスポート」開発を支援」
 
 これは、電気自動車(EV)化が進む自動車業界において、車載電池のライフサイクルを管理して、電池に使用される希少金属の再生原料利用状況を見える化したり、中古車の売買時に消費者が使用履歴を把握することを可能にすることを目的とし、今後拡大が予想される蓄電池市場において、ルール整備で先行しようというドイツ政府の戦略になります。


 バッテリーパスポートは、原料・生産・流通・使用といったライフサイクル全体での情報管理を行う事を想定され、サプライチェーンを通じた製品情報の管理が求められます。


 尚、自動車業界においては、電池以外にもサプライチェーンを通じた製品情報の共有プラットフォームの構築が行われています。
 
  JETRO  「VW、サプライチェーン間のデータ共有を進める「カテナ-X」に参加」


 このような取り組みは、今後様々な製品・サービスの分野で広がりを見せるものと予測します。
 プロダクトパスポートの活用により、リユースやシェアリング、リペア等、サーキュラーエコノミー型の経済行動がますます加速するのではないでしょうか。


 プロダクトパスポート(デジタル製品パスポート)の回は以上となります。

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この記事の作成者

株式会社JEMS
担当: 深山
URL: https://www.j-ems.jp/

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