産業廃棄物処理委託契約書とは、産業廃棄物の排出事業者と処理業者の間で締結される、廃棄物の運搬や処分の委託に関する契約書です。廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)により、その作成・保存義務に加え、その契約書に記載されるべき内容が細かく定義されています。
本トピックでは、東京都が公開するひな形を参考に、基本的な書き方を全2回に分けて解説いたします。
廃棄物処理法では、排出事業者が産業廃棄物の処理を委託する際に、委託先処理業者とその委託内容を事前に書面により契約することが義務付けられています。委託契約には「法定記載事項」と呼ばれる事項を網羅する必要があり、作成後も委託契約期間中はもとより、契約終了後も5年間保存することが求められています。
この辺りの、委託契約書の位置づけについては、本コラムの「産業廃棄物の処理委託契約について」にて掲載してありますので、そちらをご参照ください。
パターン | 区分 | 説明 |
---|---|---|
A-1 | 収集運搬の委託 | 運搬の途中で積み替え保管を伴わず、処分施設へ直接搬入する場合の収集運搬委託契約。 運搬の起点は排出事業場、運搬の目的地は処分施設になります。 |
A-2 | 収集運搬の委託 (区間委託+積替え保管) |
運搬の途中で積替え保管を伴う場合において、委託範囲が収集運搬+積替え保管となる場合。 |
A-3 | 収集運搬の委託 (区間委託) |
運搬の途中で積替え保管を伴う場合において、委託範囲が収集運搬のみとなる場合。 |
B | 処分の委託 | 中間処分や最終処分などの処分委託契約 |
C | 収集運搬と処分の両方を委託 | 収集運搬と処分を同一の業者に合わせて委託する契約 |
委託契約書は、廃棄物処理法の要件が満たされていれば、どの様な書式を使用しても問題はありませんが、様々な機関がひな形を提供しています。
業界団体から提供されているものとしては全産連(公益社団法人全国産業資源循環連合会)の様式と、建設6団体が提供する建廃様式が普及しているのではないかと思います。
全産連様式の記入手引き:全国産業資源循環連合会HP
建設6団体の様式と記入例:東京都産業資源循環協会HP
また、行政から提供されているひな形の一例として、東京都環境局のwebページで公開されているモデル契約書があります。
東京都環境局公式サイト
その他には、例えば横浜市では全産連様式をベースにした様式を公開するなど、様式例を公開している自治体も複数あります。
横浜市公式サイト
東京都環境局のwebページ上では記入例も掲示されており、とても参考になります。
本コラムでは東京都モデル契約書の記入例を引用し、基本的な記入方法についてご紹介いたします。
委託契約書の基本的な書き方について、今回は収集運搬を委託する場合(上記パターン「A-1」)を例にとって解説致します。
東京都モデル契約書の最初のブロックは、契約当事者情報と、処理業者の事業範囲の記入欄です。
契約当事者の記入方法のよくある疑問として、「工場長など拠点責任者による契約は良いのか?」といったものがあります。
この疑問については、九都県市首脳会議廃棄物問題検討委員会がwebサイト上で組織内で権限の委任が行われていることを前提として、締結可能と解説しています。
九都県市首脳会議廃棄物問題検討委員会HP 廃棄物の適正処理Q&A検索
また、「グループ会社をまとめて契約しても良いのか?」といった質問を頂くことも多くあります。
こちらの疑問に関しても、九都県市では独立した法人ごとに委託する必要があると解説しています。
九都県市首脳会議廃棄物問題検討委員会HP 廃棄物の適正処理Q&A検索
そして 乙(業者)の事業範囲についは「積込み場所」と「荷下ろし場所」の両方の許可番号の記載欄があります。
例えば「東京都三鷹市から東京都世田谷区」のように「同一の許可権者の地域内での運搬」の場合は、同一の許可番号を記入し、「東京都三鷹市から、埼玉県川越市」のように「異なる許可権者の地域間での運搬」の場合は、それぞれ所管する都道府県または政令市の許可番号を記載する必要があります。
この辺りの「どのような許可証が必要となるのか」は、若干複雑ですが、本コラムの「産業廃棄物処理業の許可制度と許可権者について」にて、解説してありますので、併せてご覧ください。
産廃処理委託契約書の書き方 基礎編(全2回) 第1回目は以上となります。
引きつづき第2回目の記事で、基本的な書き方を解説いたします。
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