2026年4月13日、環境省は、「廃棄物処理業の取引適正化に関するガイドライン」を公表しました。
■ガイドライン策定の背景
廃棄物処理業では、労務費、燃料費、車両・設備費用の上昇、労働力不足への対応など、事業運営に必要なコストが増加しています。一方で、これらのコスト上昇分が取引価格に十分反映されていない事例があり、環境省は、廃棄物処理業が社会インフラとしての役割を維持するため、適正な価格転嫁と取引環境の整備が必要であるとしています。
中小企業庁が2025年9月に実施した調査結果によると、廃棄物処理業の価格転嫁率は41.1%で、30業種中28位であったことが示されています。これは、全業種平均の53.5%を下回っており、廃棄物処理業における取引実態の把握、課題の特定、商習慣の見直しが急務とされています。
ガイドラインでは、廃棄物処理業における価格転嫁や取引適正化を進めるため、廃棄物処理法と製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(以下、取適法)の関係、発注者・受注者に求められる対応などを整理しています。
■排出事業者責任との関係
ガイドラインでは、排出事業者が適正な対価を負担していない場合、廃棄物処理業者が適正処理を行えず、不法投棄や不適正処理につながる可能性が高くなるとし、著しく低廉な料金で委託する場合には、排出事業者が措置命令の対象となる可能性にも触れられています。
そのため、排出事業者にとっても、処理料金の安さだけでなく、廃棄物の適正処理に必要な費用が確保されているかを確認することが重要です。
■取適法との関係
ガイドラインでは、廃棄物処理業と取適法の関係についても整理されています。廃棄物処理法上、廃棄物処理業では、原則として再委託は認められていません。そのため、排出事業者が処理業者に産業廃棄物の収集運搬や処分を委託する通常の取引については、取適法の対象には通常該当しないとされています。
一方で、リサイクル後に経済的価値を有する物、いわゆる有価物が生じ、それを第三者へ販売する場合には整理が異なります。その有価物を販売先へ引き渡すための運送を他の事業者に委託する場合、その運送は「特定運送委託」に該当し、規模要件を満たすときは取適法の対象となり得る場合があります。
■価格交渉で求められる対応
ガイドラインでは、発注者に求められる対応として、経営トップの関与、発注者側からの定期的な協議、説明資料を求める場合の公表資料の活用、サプライチェーン全体での価格転嫁などが示されています。
長年価格が据え置かれている取引については、協議を行わないまま価格を据え置くことが、独占禁止法上の優越的地位の濫用や取適法上の買いたたきとして問題となるおそれがあるとされています。
そのため、労務費、エネルギー費、処分単価、規制対応費用などの根拠に基づき、定期的に価格協議を行うことや、急な前倒し・仕様変更がある場合には追加費用等の適正負担を明文化することが、望ましい実務として挙げられています。
■今後の注目点
今回のガイドラインは、取適法の対象となる取引に限らず、廃棄物処理業における取引適正化と価格転嫁の考え方を整理したものです。環境省は、取適法が目指す公正な取引環境の確保と、廃棄物処理法における排出事業者責任の徹底は、方向性を同じくするものとしています。
排出事業者においては、処理料金の安さだけで委託先を選定するのではなく、適正処理に必要な費用が契約に反映されているかを確認することが重要です。今後は、見積条件や処理工程の確認、価格改定協議への対応、協議内容の記録・保存など、適正処理を支える取引環境づくりが注目点です。